3.本社役員が現地事情に精通する

 優秀な中国人幹部と優秀な日本人幹部がそろっても、中国ビジネスを担当する本社役員が現地事情に精通しないまま、中国の子会社に対して不必要に干渉すると、中国の子会社は本来的な力を発揮できなくなってしまいます。そこで、本社役員が現地事情に精通するように最大限の努力を尽くすことは非常に重要なテーマです。

 しかし、このテーマは古くて新しい課題であり、その実現は非常に難しいものです。特にやっかいなのは、現地事情を全くわかっていない本社役員ほど、自分でその事実を1ミリも認識していないところです。この認識レベルにある人事権を有する本社役員に中国の内実を理解させることは、ネズミが獰猛な猫の首に鈴をつける以上に難しく、およそ不可能です。

 この点に関する処方箋は各社、各人で大きく異なるので、一般化のしようがありません、ただし、はっきり言えるのは、中国ビジネス担当の本社役員の現地事情に対する精通度が上昇すれば、日本企業の中国ビジネスの現状が今よりはるかに素晴らしいものになることは間違いないということです。やり方がよくわからないというのであれば、毎月2週間ずつ日本と中国を往復して、下手でも中国語を学び、現地の中国語しかできないスタッフとコミュニケーションをとり、できれば少しだけでも中国のテレビや新聞に触れるという地味な努力を3年間継続すれば、精通度は極端に向上することでしょう。

 一方、ずっと東京にいて、せいぜい中国への出張は年間10日程度で、平素は中国通と称する日本人から日本語で中国ビジネスの要諦を学び、本書を含む中国ビジネス書ばかりを日本語で読んでいると、間違いなく中国ビジネスを迷走させる本社役員になります。いずれの道を選ぶかは、本社役員がみずから気づいて、努力するほかありません。

台湾企業、台湾人を活用する際は「一流企業」かどうかで判断しない

 どうしても中国人幹部の登用がうまくいかない日本企業の場合、台湾企業や台湾人の活用を考えることはひとつの代替案となり得ます。よくいわれることですが、反日感情が強く、歴史問題を主張する勢いの中国人と比較すれば、多くの台湾人は日本文化と日本の長所を冷静に評価してくれる点で日本人には圧倒的な安心感があります。