もっとも、台湾企業、台湾人だからといって、何もかもがうまくいくわけではありませんから、あくまで自社に合う台湾企業、台湾人が見つかるならば、という前提です。すでに台湾で台湾企業、台湾人との合弁事業に成功しており、双方の企業トップ同士で長い間の信頼関係が形成されている場合には、その台湾企業、台湾人に中国ビジネスのガイド役を依頼するのもよいでしょう。

 一方、日本企業は台湾の一流企業と聞けば、長い間の信頼関係もないのに大船に乗った気になる傾向がありますが、それは正しい態度とはいえません。たとえば統一企業を中核とする統一集団(以下統一集団)を例にとれば、確かに台湾を代表する超一流企業ですが、「集団」と名づけられたとおり、その傘下には多数の子会社、孫会社、関連会社が存在し、「統一」の冠は付いているけれども、日本企業が組んだ相手方はその中の1社にすぎないかもしれません。その場合、子会社、孫会社、関連会社の社長は自分が統一集団の中で出世するために、日本企業との合弁事業を手っ取り早く事業成績を上げるための手段としてしか見ておらず、必ずしも中長期的に友好関係を醸成するような悠長なことは考えていない可能性があります。

 実際、統一企業が日本企業と合弁事業を組む事例は100を優に越えています。それだけの数があれば、相手方となる子会社、孫会社、関連会社の社長に、いい人もそうでない人も含まれるのは当然でしょう。「統一集団と組んだ以上、もう安心」という発想がいかに危ういものか、おわかり頂けるのではないでしょうか。

 このように、台湾企業や台湾人とのマッチングは、あくまで必要な諸条件を具備している限りにおいて、有意義な選択となり得るとことを踏まえて、選択肢のひとつとして考える冷静さが必要です。

次回は9月19日更新予定です。


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