広島県福山市に本社を置く日本一のデニム(ジーンズの布地)専業メーカーであるカイハラは、1893年に地元の特産品「備後絣」のメーカーとして誕生し、紡績メーカーが次々と姿を消すなかで幾多の変遷を遂げ、現在の紡績・染色・織布・整理加工の一貫生産に至っています。以前からユニクロのジーンズに使わせていただいており、EDWIN、Levi's、Lee、BIGJOHN、GAPなど国内外の主要ブランドにも出荷しています。貝原潤司社長はこのように述べています。

「当社は『下請けにはならない』を社是の一つにしている。実際にはジーンズメーカーからの発注を受け、ジーンズの生地になるデニムを納入している。だが、受注で受身にならず、ジーンズの新製品の共同開発について積極的に提案している」(「下請けにならず、積極提案」日経新聞、2013年4月9日)

 現在のカイハラのような地位を築くまでには、相当な企画構想力と信念があったと思います。今までにない独自の商品やサービスを見つけるのが大事ということになりますが、これを発想するには一朝一夕ではない血のにじむような努力をされたことでしょう。

アイデアを生み出す2つの方法

 常にヒットするアイデアを生み出す方法はないと思います。もしあったら、すでに知れ渡っているか、それを知っていて密かに使っている人は大金持ちになっているに違いありません。

 それでは、新しいアイデアをつくり出す一般的原理はあるのでしょうか。

 ジェームス・W・ヤング氏の『アイデアのつくり方』(今井茂雄訳、阪急コミュニケーションズ)によると、それはこんな具合に要約できます。

(1)アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない。

(2)既存の要素を新しい1つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性を見つけ出す才能に依存するところが大きい。事物の関連性を素早く見つけ出す人の心には、言葉の使用に関してアイデアが生まれる。事実と事実の間の関連性を探ろうとする心の習い性がアイデア作成には最も大切であり、これは練習しだいでできるようになる。

 具体的には、アイデアのタネを見つけるために、すでに存在するいろんな資料を集め、資料同士の関係性を探しつつ資料に手を加え、その意味を探すのではなく「意味の声」を聞き、どんな些細なことでも紙に書き留めておきます。1つひとつ書く「言葉」が重要なのです。あとは、意識の外で何かが自分の組み合わせの仕事をやるのに任せる、ということです。