事実、資料を読んで気づいたことを紙に書き出して必死に考えていると、そのときには答えが見つからなくても、翌朝、目を覚ました瞬間に良い考えがひらめいた、などという経験のある人もいるのではないでしょうか。僕もたまにあります。

 まったく新しいことの発明・発見とは違い、今までに存在する要素の新しい組み合わせなので、無から有を生み出すわけではないだけ気持ちは楽です。練習を重ねればできるようにもなるでしょう。先進的な企業のA社、B社、C社のビジネスモデルの良いところを取り出して、模倣して組み合わせ、そこに自分の考えを加味してビジネスモデルを作ってもいいでしょう。ただし、取引先との交渉事も含めて、あくまで実現可能な限りではありますが……。

知恵を生み出すための4つのステップ

 別の観点から見ると、どんなに新しい事業でも、「顧客を見つけて商品・サービスを販売する」という基本は変わりません。販売するという行為は、アイデアの勝負とか創造性が大切だといわれますが、突き詰めると数々の知識をどのように組み合わせて使うかの「知恵」の問題に至ります。

 それではいったい「知恵」とは何でしょうか。

 不思議なことに、先述したジェームス・W・ヤング氏とほぼ同じような結論を唱えている名著があります。1974年出版の唐津一著『販売の科学』(実業之日本社)です。

「どのようにすばらしい知恵でも、結局はその人がこれまでに知っていたことの、新しい組合せの発見である。(中略)その内容を図面にするとか、人に伝えるとかいったときには、結局はその人がこれまでに知っていた言葉とか方法、道具などを組み合わせるより方法はない。知らないことは知らないのであって、それを知恵の中に組み込むことは無理である。つまり知恵とはその人がこれまでにもっていた情報の新しい組合せの発見である」

 さらに、この本の著者である唐津先生は、知恵を出すためには4つのステップが必要だと言います。

(1)事実を知ること…何でもできるだけたくさん知っておくこと。本を読んだり人の話を聞き、世の中でどのようなことが起きているかの事実を、自らの手で触れてみる。

(2)規則性を発見すること…事実のなかには多くの規則性なり繰り返しがあり、経験が役立つ世界には必ず規則性がある。

(3)組み合わせを作ること…何を考えても何を言っても差し支えないという自由な空気がなくては、組み合わせは増えない。

(4)評価ができること…素晴らしいアイデアマンは評価の名人でもある。

 そして、これらのステップを推し進めるのは「好奇心」と「目的意識」であることを忘れてはならない、と論じています。好奇心と目的意識を持つのは、どんなときでも大事なことなのです。