「問題」に対する捉え方の違い
話を伺ったのは、MITのオットー・シャーマー氏が中心になり生み出されたU理論をカオスパイロットで教えながら、同時にコンサルタントとして数多くのデンマークの職場を見てきたソーレン・ラブンさんです。
「君の行為は、チームのみんなにとって自分の思っていることを伝えるという“サービス”。心に秘めていることを明確に示したからね。問題があるにも関らず逆に何も言わないのは、デンマークではタブー。
デンマークは個人主義であるからこそ、他人の思っていることについて知りたいという思いがあるんだ。個人をリスペクトしていて、心を開いてくれたことについて、私たちは感謝の意を示すんだよ。
ありがとう、という言葉には個人に対する尊敬の意味がある。あなたが重要、個人の思いが重要という考えなんだ」
なるほど。ところで、私はこの問題を柔軟に受け止める態度が、早い段階での問題解決に繋がり、結果的にデンマーク人の生産性の高さを証明しているように思えます。デンマーク人の生産性の高さはどこにあると思われますか?
「これは私の想像だけど、デンマーク人は習慣を変えることが上手い。何か上手くいかないことがあれば、私たちは習慣を変える。デンマーク人は他の国の人よりもそれは上手いのではないかと思う。
デンマークでは問題が起きたときに、オープンに話す文化があり、何か上手くいかないことがあればそれをはっきりと伝える。米国は階層社会なので、『これはいいね、でもこの辺をちょっと変えられるかな?』という風にアメリカ人には話すけど、デンマーク人にはそれでは上手くいかない。もっと直接的に言うね。
この断固とした態度は、別に相手に社会的な恥をかかせるものではない。単純にその人が受けた教育が悪かったのかと思うから言うのであって、別に本人に直接向けるわけではないし、相手もそれを理解している。
それにデンマークでは上司よりも“問題”の方が重要。上司がいるから会社にいて仕事をやるのではなく、仕事をやるために会社にいるという文化がある。タスクの方がより重要なんだよ。
U理論にも、人は自分のしていることに感情的に繋がりを持つことができれば、本人は納得がいくまでやり続けるので、そこから生まれる解決は長続きするという考えがある」
上司がいるからではなく、仕事をやるために会社にいる。この考え方を取り入れることができれば、私たちが普段行っている無駄な残業を少しは減らすことができるかもしれません。
私が広告代理店に勤務していたときは、誰に何か言われたわけでもないのに上司よりも早く帰宅すると悪い気がしたものです。明日やっても問題ない仕事をしながら、横目で上司がオフィスを去るのを確認してから帰ることもありました。
仕事をしているには変わりはなく、また中には「遅くまで頑張っているね」と残業に対して評価してくれる上司もいたので、こういった種類の残業をやめる理由も見つかりませんでした。しかし幸福大国のデンマークに住むようになってから、幸せな働き方とは何か考えるようになり、残業に対する考え方も変わりました。