生産性を上げて
ワークライフバランスを実現する働き方
風力発電機メーカーのヴェスタスでエンジニアとして勤務しているクラウス・オーバーベックさん(33歳)は、毎日8時から午後4時まで働いていますが、特別な状況や緊急の案件がない限り夕方4時以降に仕事をすることはほとんどないと言います。
平日は週に2度は友人と会い、彼らとのゆっくり過ごす時間を大切にしているクラウスさん。あなたにとって仕事とは何ですか?と聞くとこんな答えが返ってきました。
「会社にとって価値をもたらすタスクを完了すること。それはサービスかもしれないし、または会社にとって価値をもたらす何らかのタスクかもしれない。会社にサービスを私は提供しているのです。だから彼らは自分にお金を払っている。
仕事を楽しいと思うときもあります。技術に関する話をしていても仕事とは思えないくらい楽しいときがある。単純にやらなければいけないからやる仕事ではなくて、楽しめる仕事を見つけることに重点を置いています」
昇給についてはどうお考えですか?
「昇給は自分にとっては大きな違いをもたらしません。自分のした仕事が相手にとって感謝されることが大切なのです。給料はある一定のレベルまでいくと満足するようになります。それによりたくさんもらっても、それだけ高額の税金を支払うことになりますからね。すでにある程度の年収をもらっているので、現状には満足しています。
昇進はというと、時々上司から自分はソフトな人間すぎると言われます。でも、だからといって自分の性格は変えたくないんです。どうしてもっとハードな人間になりたいと思うのでしょうか。自分でない人間を演じることはしたくありません」
確固たる価値観をお持ちなのですね。
「そうです。会社側が自分のもっているものを見なくてはいけないんです。多くの人はそれを見ることはありません。みんな異なる価値観を持っていますから。もっとタフな人が欲しいと思っているかもしれませんが、いろんな上司がいます。どんな人材を望むのかは、彼らの性格次第ですし、彼らがどう自分を見るのかということです」
ところでクラウスさんは仕事かプライベート、どちらが大切ですか?
「簡単です。もちろんプライベートの方が重要です。自分が何者かと聞かれたら、私はベスタスのエンジニアで、ダンサーです。それに絵を描くのも好きだし旅行をするのも好き。周りの人はみな私のことを一人の人間として理解しています。
あなたという人間は仕事だけで定義すべきではないと思います。仕事はあなたの一部として定義すべきです。もちろん仕事は大切ですし、この仕事に感謝しています。でも、同時に自由な時間も大切なのです。演劇を見たり、ダンスをしたりなんでも好きなことができるという自由です」
仕事に対して、どのような価値観を持たれて取り組んでおられるのですか?
「楽しむこと、オープンであること、誠実であること、信頼できることの4つです。自分がやっていることに上司が信頼してくれている。今日は家で働くと言っても、自分は仕事をやり遂げるんだと彼らが信頼してくれていることです」
ピーター・ドラッカーは『The Essential Drucker』にて、次のように述べています。「多くの人々は、結果以上に努力の方ばかりに目がいっている。組織や上司への借りや、彼らが自分たちにとってすべきことに気を取られている。それが結果的に彼らを非効率な人間にしているのだ」
問題とそれを指摘される自分、上司との関係と自分の仕事、会社が与える肩書きと一人の人間としての自分。これらをそれぞれ切り離して考え、自分の仕事のパフォーマンスの質に注目してみてはいかがでしょうか。
その上で、持っている知識やスキルを使って何を会社に貢献できるのか考えると、仕事の生産性が高まり、デンマーク流の幸せな働き方が見つかるかもしれません。
第8回に続く(10/31掲載予定です)
大本綾(おおもと・あや)
1985年生まれ。立命館大学産業社会学部を卒業後、WPPグループの広告会社であるグレイワールドワイドに入社。大手消費材メーカーのブランド戦略、コミュニケーション開発に携わる。プライベートでは、TEDxTokyo yz、TEDxTokyoのイベント企画、運営に携わる。2012年4月にビル&メリンダ・ゲイツ財団とのパートナーシップによりベルリンで開催されたTEDxChangeのサテライトイベント、TEDxTokyoChangeではプロジェクトリーダーを務めた。デンマークのビジネスデザインスクール、The KaosPilotsに初の日本人留学生として受け入れられ、2012年8月から留学中。
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