過去数回、合理的な投資行動を阻む人間固有のバイアスを回避するため、思い切って自分の意思決定を排除する仕組みとして「分散投資」「長期投資」「積立投資」についてお話ししてきました。この連載を読んで会社の確定拠出年金や個人の証券口座で投資を始めようと思う方がいればとても嬉しいことですが、実際に投資をする場合、知っておかなければならないことがまだあります。分散投資、長期投資、積立投資などはあくまで総論的な話で、野球にたとえるなら、ポジションごとにどのような人を配置すればよいか(分散投資)、または、一試合だけで見るのではなく全シーズンを踏まえて作戦を立てよう(長期投資)といった非常にハイレベルの意思決定です。
実際の試合では対戦相手の特徴を踏まえたうえで細部を詰め、例えば、なるべく点を取らせない作戦でいくのか、それとも打撃戦に持ち込むのかなどを考える必要があり、資産運用にも同じことが言えます。そこで、今回からは資産運用においてオヤジ世代の皆さんのそれぞれの目的を達成するためにどのような戦略を立て、それを遂行すればよいのかといった実践ノウハウをご紹介します。
資産形成で重要な三つのポイント
上手に資産形成を実践するうえで重要なのは主に、(1)目的に合った投資をする、(2)年齢によって投資の仕方を変える、(3)投資を計画通りに進める、の三つです。今回はまず、(1)の「目的に合った投資をする」についてお話しします。
目的に合った投資の仕方を判断する基準は、「投資期間」と「目標」です。投資期間は1年程度の短期か、10年超の長期かということで、目標は資産を殖やす、もしくは守るといったイメージです。一般的には、「短期で守る」場合は市場変動の影響を受けにくい低リスク・低リターンの運用が適切で、「長期で殖やす」場合は高リスク・高リターンの運用が適しています。