中小企業庁と金融庁は経営者自らが融資の保証人になる経営者保証制度で、企業が倒産しても個人財産が全額没収されないように今年度中に(2014年3月までに)指針を作り、住居や当面の生活費を残し、経営者が会社再建に取り組みやすくするといいます。早急に指針を発表し、実施してほしいものです。
また、根本的に金融機関の貸付も担保主義の優先度を少しでも下げ、「事業そのもの」を正当に評価して貸し出す体制に変わることを望みます。
ベンチャーキャピタルから資金を調達する
続いては、ベンチャーキャピタル(略してVC)からの投融資について述べます。
VCは、ハイテクやITなどの未上場企業に投資し、その企業の経営支援・指導をして上場に導いたり、他のファンドに転売してキャピタルゲイン(投資した株などを売却して得た利益)を得ます。また、投資事業組合(ファンド)を作って投資家から資金を集め、そのファンドを通してベンチャービジネスに投資し、そこでの運用報酬も得ています。VCには金融機関の関連会社が多く、その他にも商社系、通信会社系、政府系(中小企業投資育成会社)、独立系などいろいろあります。
VCは成長性が高く収益性の見込める成長期の会社に投資するケースが多く、将来性の明確でない創業期の会社に投資してくれるところは少ないです。投資先がいち早く上場でき、上場時の時価が高いことがVCにとっていちばんの関心事です。カネだけ出して口は出さないVCもあれば、カネも出すが、資本政策の立案、上場準備作業の支援、得意先や提携先の紹介、人材紹介や役員派遣まで行うVCもあります。米国のように創業前から支援して起業家を育てようという気概があるVCに、数多く出てきてほしいものです。
経済産業省の外郭団体ベンチャーエンタープライズセンターによると、2011年度の日本のVCの総投資額は1240億円でした。10年度より10%増えています。少し古いデータですが、母集団が多いほうがよいと考えて、2006年に上場した188社の有価証券届出書をすべて調べてみました。なんと約7割に当たる128社がVCからの投資を受けています。それだけVCはベンチャービジネスの資金調達に大きな役割を果たすようになったということです。
いずれにしても、VCは上場時ないしは上場後1年以内には持株を売却しますし(VCの持株比率しだいですが、売却時に株価が乱高下することもあり、一部は保有したままの場合もあります)、対象会社の成長が止まったり収益性が見込めなくなったら突如、別のファンドに売却されたりするので、VCと付き合うにはそれなりの覚悟が必要です。
僕は、莫大な試験研究費やスタートアップ資金が必要な会社は別にして、上場しても小規模組織で済みそうな会社には、VCの積極的な活用はあまりお勧めしません。
(連載了)
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