業界トップのサントリーが11年ぶりにウィスキーの増産に乗り出せば、2位のニッカは14年ぶりに「スーパーニッカ」をリニューアル。ピークの1983年以来、4半世紀以上縮み続けてきたウィスキー市場が今年、久々に拡大に転じようとしている。

 かつて、隆盛を誇った「ウィスキー」は、若者の酒離れや低アルコール志向を受け、今や「おじさんのお酒」のイメージが定着してしまった。ピークの1983年に約38万3000キロリットルあった国内ウィスキー市場は昨年には7万4000キロリットルと、かつての5分の1の規模にまで縮小した。市場が増勢に転じるのは、酒税改訂による減税で微増となった1997、1998年以来の吉報となる。

 ただし、ウィスキー市場を牽引しているのは、ここ数年、ブームの兆しが見えていたシングルモルトのような、いわゆるハードリカーとしてのウイスキーではない。

 実は、現在の市場拡大の牽引車は、ウィスキーをソーダ水で割った「ハイボール」。これが20~30代の若者に受けているのだという。サントリーが昨年来、ハイボールを料飲店に積極的に売り込んだこともあり、ちょっとしたブームになっている。かつての酎ハイブームの再来だ。

 ちなみにサントリーの増産だが、ウィスキーが対前年比1.0%に対し、ハイボール用ソーダは対前年比で1.6倍。ハイボールの好調ぶりがうかがえる。

 逆に言えば、若者にとっては、ハードリカーの代表であるウィスキーも低アルコール飲料でしかないということだ。ハイボールと同じ炭酸系のアルコール飲料である「酎ハイ」市場も再び拡大に転じており、若者の低アルコール、炭酸嗜好にますます拍車がかかっている。

 しかもハイボールはビールと比較すれば安いため、不況による節約志向と相まって売れているということもある。

 こうしたハイボールでウィスキーの旨さをしった若者世代が、はたしてシングルモルトなど「本物」のウイスキー市場に戻ってくるのかどうか。

 メーカー各社が注力する夏商戦でハイボールがどこまで若者に浸透するか、それがウィスキー市場復活に向けた最初の試金石といそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 小出康成)