前哨戦の賞、パイオニア、学派の系譜
これがノーベル賞受賞のトレンドだ

●ノーベル賞には「前哨戦」となる賞があり、それらの賞をとっている人が、その後ノーベル賞をとる確率が高い。たとえば、生理学・医学賞では米国のラスカー賞(医学の世界で権威が高い)、イスラエルのウルフ賞(医学、化学など対象は幅広い)など。

ノーベル賞の選考は論文重視。トムソン・ロイター社が1989年から手がける「トムソン・ロイター引用栄誉賞」の受賞者が、ノーベル賞候補になり易い。過去20年以上にわたる学術論文の被引用数に基づいて、各分野の上位0.1パーセントに入る研究者が受賞。ただし、あくまで論文の引用件数をベースにしているので、その作成者の功績がノーベル賞にふさわしいかどうかは、一概に判断できない。

●その時代に話題となっている分野の研究者が、受賞するケースも多い。たとえば、子宮頸がんのワクチンが認可されたときに、1980年代に子宮頸がんの生体細胞のなかにヒトパピロマウィルスのDNAを発見したドイツのハラルド・ツア・ハウゼン氏が受賞した(2008年・生理学・医学賞)。

 また、体外受精の技術を完成させ、1970年代に世界初の試験管ベビーを誕生させたロバート・ジェフリー・エドワーズ氏が、その子(初の体外受精児だった女性)が結婚して、元気な子どもを産み、その子どもも健康だとわかったタイミングで受賞している(2010年・生理学・医学賞)。

●各研究分野のパイオニアが重視される傾向がある。たとえば、2012年にiPS細胞の実用化に向けた研究が評価され、生理学・医学賞を受賞した山中伸弥氏と共に、動物実験における細胞のリプログラミング技術の先駆者であるジョン・バートランド・ガードン氏が同時受賞。

 また2008年の化学賞は、オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質を生物や医学の研究で標識として使えるようにした中国系の研究者らが受賞した。彼らの受賞はかねてから有力視されていたが、このときに、そもそもオワンクラゲからこのタンパク質を発見した下村脩氏も同時に受賞している。本人も言っていたように、このタンパク質が発見された当時は、標識としての使い道などは考えられておらず、「何の役に立つかはわからない」状態だった。

 ちなみに、免疫学の既成概念を打ち崩したと言われ、「世界で最も論文を引用される男」と言われる審良静男氏(大阪大教授)の場合、毎年ノーベル賞の有力候補に挙げられるものの、受賞に至っていない。ヒトの医療への応用などで貢献度は高いものの、同分野ではそれ以前にハエとネズミで成果を出した学者たちにノーベル賞が贈られている。