「話題性はあるが商機としては薄い」「盛り上がりがどれほどなのか予想できない」……。日本の大手企業数社に聞いても、上海万博への期待感が見えてこない。いくつかの上海の日本企業からも「万博にはまったく関心がない」「交通がマヒするので却って迷惑」など、冷めたマインドが垣間見られる。上海ビジネスのリストラでそれどころではいられないようだ。
そんな想定外の経済危機の中で迎える上海万博だが、来年5月の開幕まであと1年に迫った。テーマは「より良い都市、より良い生活(Better City, Better Life)」。会期は2010年5月1日から10月31日、328ヘクタール(*1)の会場を舞台に、186の国と47の国際機関((*2)4月13日時点)が参加し、持続可能な都市発展を目指して環境や省エネの先端技術を披露する。
万博の主旨が国威発揚型から「地球的規模の課題解決型」にシフトしつつも、中国が主催し、上海市が開催する上海万博はやはり威信を賭けた国家事業。近年は来場者数の減少、関心の低下など国際博覧会は曲がり角に立たされていたが、「史上最多の参加国と国際機関」「推定入場者数も史上最大の7000万人」など、次々に記録破りを出す超ド派手な国際イベントになることが見込まれている。
その時代の文化、文明、国際関係などを反映する国際イベントを国際博覧会というのであれば、“極めて上海的”な万博があってもおかしくはない。その1つがスポンサー集めだ。上海万博で募集するオフィシャルスポンサーはグローバルパートナー、シニアスポンサー、プロジェクトスポンサー(*3)の3種類。そのうちグローバルパートナーは最高レベルの市場特権と商業権を得られるという。そのスポンサー料は約50億円だ(ちなみに北京五輪のワールドワイドパートナーは1企業当たり約65億円だった)。
上海万博ブランド使用権(全世界)が認められ、パビリオン出展優先権、会場内での独占商業権などのインセンティブを与えられるグローバルパートナーだが、とりわけ「会場内での独占商業権」は強烈な影響力を持つ。すでに、中国東方航空、中国移動通信、中国電信、上海汽車・中国GM、交通銀行、シーメンス、コカコーラ、国家電網、中国人民財産保険、宝鋼集団、上海実業、中国石油、遠大空調の13分野14社(06年11月時点の目標は15社)が決まっているが、1業種1社という限定により、あるメーカーがスポンサーになると、会場ではその商品以外使えなくなる。少なくともこの上海万博では、会場内で使うクルマはみんな「上海汽車・中国GM」ということになってしまうのだ。
「このブランドのものしか飲めません、ということになれば否が応でも7000万人が同一ブランドを飲む。たとえ数十億円という莫大なスポンサー料でも、出せば元が取れ、広告宣伝になる、そんな見方もあるわけです」と当時愛知万博に携わったある事情通は話す。
(*1)愛知万博の面積(森林部除く)の約4倍とされる。
(*2)愛知万博の参加国と国際機関は125。上海万博はその1.8倍。
(*3)シニアスポンサーはグローバルパートナーに次ぐ特権と商業権を得る。違いは「ブランド使用権を持って全世界で市場活動が行える」のがグローバルパートナーに対し、シニアスポンサーは中国国内での市場活動にとどまる。また、この2つが1業種1社に限定されているのに対し、プロジェクトスポンサーは1業種で複数社がスポンサーになれる。