

ワクワークのビジネスモデルはこうだ。まず、孤児院の学生をトレーニングする現地のプロの英語教師を採用する。この人たちは、大学を卒業して教員免許を持ち、他の語学学校で数年間勤めた経験のあるベテランの講師たちである。
このプロの英語教師たちは二つの役割を担っている。ひとつは、日本の企業人や大学生向けに、スカイプを通じて英会話レッスンを提供すること。もうひとつは、孤児院の大学生たちに、約3ヵ月間から半年間、英会話教師としてのトレーニングをみっちり行うことである。そしてトレーニングを積んだ孤児院の大学生たちは、日本の小学生から中学生向けのジュニアコースの講師担当としてデビューしていく。
すなわちワクワークの英会話サービスには、プロの英語講師が日本の企業・大学を対象として行うサービスラインと、孤児院出身の大学生が日本のジュニア向けに行うサービスラインの2種類がある。
このうち、プロの英語講師が教える顧客数は、現在40社、3大学にまで拡大。他方、孤児院出身の大学生によるジュニア向けのサービスの拡大はこれからが勝負だ。山田さんはまず、地元湯河原町の適応指導教室で、なんらかの理由で学校に通えない生徒を対象にこの授業を実施、日本の生徒たちが徐々に自信を取り戻していく姿を見て、事業の手ごたえをつかんでいる。
スカイプ英会話事業者は、今や80近くもあると言われる。その多くは、地元の大学生ら(講師役)と日本人のユーザー(生徒)をウェブ上でマッチングさせて、歩合制で講師に報酬を支払う、サヤ取り型のビジネスモデルである。
講師を数百人単位で組織化しているケースも多いが、通信回線などは講師負担で、人材を変動費として扱っているものが多い。これに対してワクワークでは、40人の講師(うち現在、孤児院出身の学生は11名)を常勤の固定給で雇い、みんなでオフィスに集まって仕事をするスタイルをとる。
通信インフラも組織として整備しており、バックアップ回線もきとんと確保している。単なるマッチングによるサヤ取りではなく、きっちり人材を育て、組織として責任を持つ姿勢がそこにはある。ワクワークの講師たちは、授業をしていない時間には、教材開発や、次のプロジェクトについて熱心に話し合っている。
だが山田さんは、孤児院やスラム街の学生たちが自活するための就業の出口として、英会話講師だけでは不足だと感じている。もっと種類が必要だ。もっと様々な事業を起こさなくてはならない。山田さんは孤児院の子供たちの将来の夢を叶える100のビジネスを立ち上げたいと考えている。