インフルエンザシーズン突入である。集団感染の報告もぽつぽつ出てきた。ただ一般にインフルエンザの流行は1月上旬~3月上旬が中心。ワクチン接種の効果が出るまでには2~3週間必要なので、12月中旬までに予防接種を受けるといい。効果は5カ月ほど持続する。
今13/14年シーズンはA香港型とB型、09年に流行した「新型インフルエンザ(今は通常の季節性として扱われる)」の類似株A/H1N1型の流行が予想されている。特にA/H1N1型は近年、アジア圏での報告が相次いでいる。予防接種もそうだが、マスク、手洗い、うがいを怠りなく。
「注射嫌い」にはインフルエンザの予防接種は苦痛だろう。しかし、一石二鳥で「心疾患リスク」も軽くしてくれる、となれば我慢する気になりませんか? 先日、米国医学会誌「JAMA」に掲載されたメタ分析から。
この研究は、ワクチンの効果を検証した六つの試験の被験者について、インフルエンザの予防接種と心血管系イベント(心臓発作や心臓疾患死)との関連を再解析したもの。被験者の平均年齢は67歳で、そのうち約3割に心疾患の既往歴があった。
解析の結果、予防接種を受けた3238人のうち、1年以内に心血管系疾患を発症したのは95人(2.9%)、一方、非接種者3231人のうち、心疾患を発症した人は151人(4.7%)だった。つまり、インフルエンザの予防接種で発症リスクを36%減らしたことになる。特に、心臓発作を経験して間もない患者で「予防効果」が高かった。接種群で心疾患の発症が10.25%だったのに対し、非接種群では23.1%と発症が半減したのである。今年、心臓発作を経験した方は再発を防ぐためにも、医師と相談して予防接種を受けたほうがよさそうだ。
インフルエンザに限らず、重度の呼吸器感染症は心疾患リスクになることが知られている。感染に伴う全身の衰弱や炎症、不整脈が影響すると推測されるがメカニズムは未だに不明。そこが明確になれば“注射一本で心臓を守る”なんてことがかなうかもしれない。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)