自分を、そして社会を変える体験ができる2年間

乙武 今日、ここでお話しさせてもらっているのは、ぜひ、多くの方にTFJの「フェロー(教師)」に応募してほしいからです。教育は社会を変えると松田さんもおっしゃっていますが、僕も真剣にそう思っています。

 そしてぜひフェローになってほしい理由が2つあります。まず、ティーチ・フォー・ジャパンはきちんとした研修やサポート、振り返り実習やワークショップ、さらにそれぞれの教師が孤立しないネットワークシステムなどを持っています。それに加えて、この2年間、教員を経験することで、自分と真剣に向き合えるからです。「オレってこんなにできないんだ」、「でも意外とこういう強みもあるよな」というように見えていなかった自分が見えてきます。

 こんなに丸裸にされる職業はほかにないと思います。みなさんは、これから何十年と長い人生を生き抜いていかなければなりません。ぜひ、深く自分と向き合う経験をしてほしい。この先、どんな仕事に就くとしても貴重な2年間になると思います。

 ふたつめ。この仕組みは2年間限定であるということ。だからこそ、しがらみを気にせずに取り組める、という部分があると思うんです。僕も先ほどお話したように、最初から3年間という任期付き採用でした。ある意味、「一人ティーチ・フォー・ジャパン」だったと思います(笑)。

 その結果、あまりに横並びを意識する職員室の風土に左右されることなく行動できた。僕の判断基準は、「これが子どもたちのためになるのか」。そこで、「なる」と思えたなら、それがたとえ「前例がない」「フツーならやらない」と言われたことでも、やろうと思えたんです。

 でもそれは、3年という任期付きだったからだと思うんです。一般的には、この先も教員の世界で何十年と生きていかなければならないと思えば、なかなか思いきったことはしづらい。空気を読んでしまい、「これまでどおり」「まわりと同じ」を再優先にしてしまう。これを打ち破るには、よっぽどの変わりものとか、ずっと一匹狼でいる覚悟が必要だったりします。それを40年続けろ、というほうが無理な話です。

 じゃあ、どうやって教育を変えていったらいいのか…そこで、このTFJの出番だと思います。2年間、と決まっているからこそ、教育界の悪しき「前例主義」「横並び主義」を排し、果敢に新しいチャレンジもできる。子どもたちに対する優先順位も変わってくる。

 そうやって少しずつ、新しい人たちの力が教育に熱をもたらし、そのムーブメントが大きなうねりになっていく、と僕は思うんです。

 みなさんの貴重な2年間が、どれだけ社会や教育界にインパクトを与えるのか…、まだ誰も気づいていないかもしれません。でも現場を先に体験した僕にはわかります。この流れが続けば、絶対に変わる。だからお願いです。どうかみなさんの2年間を貸してください。でも、その2年間は予想以上に見返りの大きい2年間となることを、松田さんとともに約束します。

松田 本当にそうです!教育は社会を変えると思っています。ぜひたくさんのご応募、お待ちしています。

撮影:宇佐見利明

TFJでは、来年4月からのネクスト・ティーチャー・プログラムの候補生を募集しています。学生だけでなく、社会人経験者(ただし教員免許を持っている方)も応募可能です。詳しくは、TFJのホームページ→http://teachforjapan.org/ を参照ください。