防災行政無線の検証
“鳴らない防災無線”を巡る真実とは

 最後に作業チーム3の主査である澤谷邦男副委員長(東北大学名誉教授・電気通信工学)が、同報系デジタル防災行政無線(以下、デジタル防災行政無線)の不具合検証の経過を報告した。

 ここでも、前出の作業チーム1が指摘したような、実際の災害対応と事前準備の乖離を裏付ける情報が挙がっている。

 発災当日の防災行政無線の故障の原因を、メーカーは、外部から異物混入して電源系がショートしたと説明。「想定外あるいは不可抗力の事故」と主張している。

 作業チーム3の報告によると、名取市がデジタル防災行政無線を導入したのは、平成20(2008)年度及び21(2009)年度だが、当時の初動体制マニュアルには、デジタル防災行政無線に関する記述はなかった。

 防災行政無線は、平時から1日に複数回、正常に装置が稼働しているかどうかの確認(状態監視)を行うのが通常だ。名取市でも発災当日の午前中まで、4時間毎に自動で行う定時の状態監視は正常に作動していた。

 定時以外の状態監視は手動でやらなければならないが、市は手順を知らなかった。ヒアリングでは、メーカー側は使用法を説明したと主張。両者に認識の差異が生じているという。運用マニュアルには、正常時の手順だけが記載されていた。

 発災直後の14時48分、デジタル防災行政無線の送受信機(親機)の電源が落ちた。この時から放送ができなくなっていたが、当日の担当職員は、別の階にある操作卓から8回分の放送を続けた。市側が、防災無線が作動していないことに気がついたのは約4時間後の19時5分だった。

 不具合の発見が遅れたのはなぜか。

 名取市の庁舎内の防災無線の構成は、基地局装置(親局)やアンテナは庁舎の7階、操作卓は3階の窓のない部屋にある。庁舎屋上の拡声器は、1年前のチリ地震津波時に内陸部の住民からクレームが出たため、鳴らさない設定になっていた。このため庁舎内では無線の戸別受信機でモニタしていたが、実際にはハウリング防止のため、普段から音量を最小に絞っていた。

 市の担当者は、「放送不可の状況があれば3階の操作卓上に表示されるものと認識していた」という。だが操作卓は、故障が表示される仕様になっていなかった。

 さらに、担当者は「ボリュームを絞っているために放送が聞こえないものと判断した」という。音量ゼロの状態でも、本来はランプの色で受信は確認できるうえ、非常放送時は最大音量で鳴る仕様だったが、職員は認識していなかった。