「リーマンショック5周年」
経済状況がもたらした米中関係の変化

 2009年以降の米中関係は散々だった。低迷する米国経済と劇的な回復を示した中国経済の明暗の対照を目の当たりにして、中国は経済面でも対外関係面でも、ある種の心理バブルに陥った。

「領土・領海・主権問題では、もう一歩も譲歩しない」という強硬な「核心利益」論が噴き出したのも、この頃である。

 中国の強硬態度に遭遇したオバマ第一期政権の対中政策は、「臆せずぶつかる」式になった。尖閣問題でも、クリントン前国務長官が、伝統的な不介入方針を変えて「日米安保条約の適用範囲内」、さらには「力による現状の変更に反対」を明言する啖呵を切った。

 しかし、リーマンショックから5年が経過したいま、局面はずいぶん変わりつつある。

 中国は借金と投資頼みで成長率を嵩上げしてきたのが祟って、のっぴきならない経済難局に直面している。習近平主席が発足後半年で権力基盤を確立したのも、昨年11月に決定された「三中全会」改革が大胆かつ全方位の改革プランになったのも、危機感の高まりのなせる業である。

 習近平主席はバランスを取りながら、この難局を乗り切る構えである。経済面では改革派の建議を容れて、市場の活用や対外開放の加速など、(中国の政治座標軸では)「右」寄りの政策を執る一方、政治面では毛沢東を彷彿とさせる「左」寄りの姿勢を執っている。不景気になっても大衆の支持を失わないよう、反腐敗、綱紀粛正を強く打ち出すとともに、「中華民族の偉大な復興」という「夢」を語っている。

 安全保障・対外政策面では、後述するように米国に「新型大国関係」を提唱し、ソフトトーンの講話をする一方で、防空識別圏の設定や南シナ海での空母艦隊演習など、政権への支持と忠誠が欠かせない解放軍の願いは叶えてやる等々である。

 米国の方は、経済の回復の兆しがはっきりしてきたが、一方で財政再建、とくに国防予算の削減が第二期オバマ政権の重い課題になっている。国内では一期目の成果である「オバマ・ケア」改革を敵視する野党共和党、とくに「茶会」勢力に政府予算を人質に取られて、「財政の崖」騒ぎに再三悩まされている。

 国民の間には国際問題への関与を厭う「内向き」気分が広がっており、中東問題介入への消極的な態度、とくに9月のシリア化学兵器使用問題の顛末は、米国の国際指導力の衰えを感じさせた。