いつの間にか原子力は
「クリーンエネルギー」と考えられる
この4つのポイントには全て前提があります。政府や人々が「やる気になれば」という仮定です。ロビンスは、この仮定は福島第一原発事故(震災)で仮定ではなく「必須」のものに変わったと書いています。
4つのポイントは、「電力自由化」「非化石化」が大前提で、それによって経済は効率化し、新しいビジネスが生まれ、成長戦略となると主張します。そして本文の6章で米国社会を対象に詳細な分析と予測を提示します。
「クリーンエネルギー」を最初に提唱したのはロビンスで、1977年に日本語版が出版された『ソフト・エネルギー・パス』(時事通信社)で登場します。ロッキーマウンテン研究所は82年に創設されました。
当時、「再生可能エネルギーこそ重要で、経済の効率化と成長を図る」、とのロビンスの考え方は衝撃をもって迎えられました。日本では団塊の世代を中心に受け入れられたものです。「クリーンエネルギー」は生態系に適合するエネルギーと定義され、もちろん原子力が入るはずもありません。
ところが、いつの間にかロビンスが定義した「クリーンエネルギー」はイコール原子力である、という図式が現れます。このことについてはダイヤモンド・オンラインで2011年4月26日に書きました(「クリーンエネルギー原子力推進」をだれが言い出したのか――福島原発震災 チェルノブイリの教訓(5))が、もう一度まとめておきましょう。
現在でも最高1リットル当たり200万ベクレルを超えるストロンチウム90が福島原発の観測井戸から検出され、9万8000人以上が「放射能難民」となっている現状は、だんだん小さなニュースになっていますが、原子力はクリーンエネルギーではないのです(ちなみにチェルノブイリ原発事故の避難者数は13万5000人)。巨大な核災害を招いた原発がどうしてクリーンなのでしょう。
米国のオバマ大統領は福島原発事故後の2011年3月30日の講演で、「2035年までに電力の80%をクリーンエネルギーでつくる。原子力は風力や太陽光発電と同様、クリーンエネルギーである」と語っています。オバマ大統領はクリーンエネルギーに原子力を入れており、現在でも考え方は変わらないでしょう。
安倍政権と自民党も「安全な原発は再稼働する」との方針を出しています。「絶対に安全な原発ならば運転しても安全だ」、というわけですが、これは「問題がなければ問題はない」と言っているだけでしょう。
オバマ大統領はどうして「原発はクリーンだ」と信じているのでしょう。これは「炭酸ガスを排出しないからクリーンだ」という意味なのです。放射性物質と炭酸ガスを分けているわけですね。