ミドリムシは、葉緑体を持ちながらも動物のように動く不思議な生き物。ビタミンやミネラル、アミノ酸など59種類の栄養素を含み、「完全栄養食」としても注目されている。また消化率は約93%と野菜よりも高く、身体に優しい食品としても知られる。

 このミドリムシの潜在的価値を世に広く知らしめたのが、東京大学発のバイオベンチャーであるユーグレナだ。2005年に世界初の大量培養に成功し、以降、緑汁や栄養バーなど、食用ミドリムシの機能性食品の数々を発表した。

 2013年9月期には“ミドリムシを当たり前に”というテーマを掲げ、ファミリーレストランのデニーズで「ミドリムシ入り ハンバーグ御膳」を提供。そのユニークさとともに、マイルドな美味しさが人気を集めた。他にも、「ユーグレナ&ヨーグルト」を全国のコンビニや量販店で発売。さらにはABCクッキングスタジオとのコラボレーションを実現させるなどの取り組みを進める。

 その結果、2013年9月期の売上高は20億9100万円。9期連続の増収を達成し、業績は高成長で推移している。

ミドリムシを用いた化粧品も開発

ユーグレナが自社ブランド「B.C.A.D.」で3月1日に発売する化粧品。化粧水や洗顔料など4品目

 食品に続いて同社が注力するのが、高機能化粧品だ。ミドリムシの油脂成分は肌荒れを防ぐ効果を持ち、現在、原料として化粧品メーカーにOEM供給を行っている。そして今年からは、初の自社ブランド化粧品の販売に乗り出す。

 ミドリムシのエキス成分である「リジューナ」はシワに効果があり、肌を活性化させ、ハリをもたらすという。この利点を活かして開発した。

 そして、ユーグレナが次に見据えるのは世界市場だ。中国をはじめとする東アジア市場は、伊藤忠商事との連携により開拓が進んでいる。「健康志向が強い富裕層をターゲットしていますが、お茶を飲みながら栄養食品をご紹介できる、高級なサロンのようなイメージで展開していきたいと考えています」(ユーグレナ広報・IRチームリーダーの安間美央氏)

 また、イスラム圏を含む東南アジア市場では、イスラム教徒向けのハラル食品の取得準備は全て完了。2018年までに300億円という食品の海外市場規模を目指す方針を打ち出し、本格的な海外進出を睨む。

 機能性食品から高機能化粧品、さらには飼料市場や燃料市場…、と新規市場を次々と開拓するユーグレナだが、微小なミドリムシのパワーが今後、世界でどのように広がりを見せるか。

(田島 薫/5時から作家塾(R)