「マッキンゼーのスライドは白黒」という都市伝説

 私は、マッキンゼーという組織に約4年間在籍しました。2年は東京オフィスを拠点にして活動し、残りの2年はドイツのフランクフルトオフィスを拠点にして活動しています。

 とくにフランクフルトにいた際は、世界中のオフィスにプロジェクトごとに短期出向しました。そして、世界中から集まったコンサルタントと、欧米や現地の多国籍企業における国際経営戦略の策定や実行支援に関わりました。

 実は、マッキンゼーという組織を世界中で体感した経験で理解した、小さな物事の1つが、パワーポイントのデザインに関するある「本質」なのです。

 ちまたに流布されている都市伝説に、「マッキンゼーのパワーポイントのスライドは白黒しか使わない」という噂があります。マッキンゼーの出身者からもこの都市伝説が流布されることがあるため、このウワサは真実味を帯びているように思います。

 なぜスライドは一色がいいのか。コミュニケーションを指南する経営系の書籍を参照すると、

「色彩やアニメーションなど、伝えたいメッセージとは関わりのない要素を排除し、シンプルな統一されたスライドの構成とすることで、1. 見る人が適切にストーリーを理解できる、2. 自分やチームが意味合いを討議・検討しやすくなる、3. 作成時間が最小限となり、あいた時間を分析に回せる」

 というようなことが書いてあるかと思います。これは間違っていません。むしろ、その通りです。

 その一方で、「スライドは白黒にこだわる」というのは、手段の目的化といって絶対に避けるべき行為でもあるのです。