チャートはあくまで手段、手段は目的によって変わる

 マッキンゼーには、インドにビジュアルの専門家がいることは知られているかもしれません。その中には、複雑でカラフルなスライドを作成する専門部隊がいます。彼らは、かわいいアイコンも作れますし、必要な写真もどこからともなく仕入れてきます。

 これも公開情報だと確認した(*1)ので言ってしまっていいと思いますが、実は、マッキンゼーのニューヨークオフィスには漫画家もいます。この漫画家は「Team Cartoons(チーム漫画)」という絵を書くのが専門で、世界のマッキンゼーでも最も稼働率の高いスタッフとして知られている存在です。ときには、数ヵ月先前まで予約が埋まることもあります。

 東京オフィスではあまり行われていませんでしたが、海外では、成功したプロジェクトの終わりに、クライアントの人たちも交えて、お疲れ様という意味を込めて1枚の漫画を作り、それをメンバーで共有して達成感を味わうのです。

 私がマッキンゼーで働いた経験の中で最も「白黒」からかけ離れたマッキンゼーチャート(マッキンゼーのスライドの独特の様式を示す言葉)は、フルカラーの漫画でした。コミカルなキャラクターが吹き出しでセリフを話す、それこそ欧米的な漫画です。

 同じように、あるプロジェクトの終了時にクライアントに送ったスライドは、白黒のMECEとはかけ離れたスライドでした。それは、クライアントが白熱した議論の結果をさらに先に進めてくれるように、そしてそれが思い出として残るようにと願ったからです。

 白黒は、手段に過ぎません。目的に立ち返れば、それに無理に拘る必要はないのです。

 *1 http://www.themuse.com/companies/mckinsey/office