緩やかな回復基調にあるといわれる米経済だが、度重なる寒波が打撃を与えている。撹乱される経済指標は連邦準備制度理事会(FRB)の意思決定にも大きな影響を与えるだけに注視が必要だ。

 2月初旬のニューヨーク市内──。水はけが非常に悪い歩道にはシャーベット状の雪があちこちに深く溜まっていた。そこに足を踏み入れると、下は汚い氷水なので、歩行にえらく難儀する。

 度重なる寒波の爪痕はこれだけにとどまらない。全米各地であれだけ頻繁に大雪が降って、厳しい低温が続いたら、家計や企業の活動に支障を来しても不思議ではないと痛感した。

 ウォール街に勤務する人の多くは、ボルカールールやドット・フランク法などの金融規制対応で現在、てんてこ舞いになっている。それに自宅周辺の雪かき作業が加わったため、彼らは疲労困憊の表情を浮かべている。

 あるアナリストは、「近所の木が雪の重みで倒れて道をふさぎ、スーパーに車で行けないので警察に撤去を要請したが、もっとひどい場所があちこちにあると後回しにされている」と嘆いていた。

 ニューヨーク市内は日中でも氷点下という日が多く、買い物に行く気が萎えている人は多い。しかも、多くのアパレル店はすでに春物に切り替えている。パステルカラーのノースリーブのブラウスなどがショーウインドーに並んでいる。今の気候との乖離が激しいため、売り上げはかなり厳しいだろう。在庫が累増していくため、3月頃に異例の春物セールが行われるのではないか、という観測もささやかれている。

 この寒さでは夜、レストランに行く人も当然減る。普段、地元客で賑わうマンハッタン内の寿司屋の板前も「1月から2月にかけての売り上げはかなり悪い」と話していた。家庭の暖房費がかさんできたため、他の消費が今後圧迫されてくる恐れもある。

 寒さが緩んだ日には、別のリスクが待ち受けている。高層ビルの外壁にへばりついていた氷がすごい勢いで歩道に落ちてくるのだ。最近は外壁がガラスのビルが多い。ハイテクのガラスは外側に室内の温度が伝わらないため、雪が解け落ちず、氷となって固まりやすい。

2月中旬、歩くのもままならないニューヨークの様子。右下はワールドトレードセンター跡地での氷落下パニックを報じる現地紙
Photo by Izuru Kato、Flickr Vision/gettyimages

 2月6日にニューヨーク市建築局は、ビル管理者に対し歩行者に注意するよう警告を発した。翌7日朝8時頃、ワールドトレードセンター跡地に建設中の高さ541メートルの超高層ビルの52階近辺から次々と氷が落下した。通勤客がパニックを起こしたため、そこにある地下鉄駅出口は閉鎖された(写真右下)。午後1時40分に解除されたが、その後も閉鎖騒ぎは起きている。