「勉強以外の何か」でめげない子が育つ
――ですが、自分の居場所が見つかることが、なぜ自信につながるのでしょうか?
柳沢 勉強という“一元的な価値”しか持ちあわせていないと、そこでの結果がダメだった場合、自信を失って大きなダメージを受けてしまう。ですが、自分で選んだ居心地の良い場所があることで、価値が“二元化”します。そのバランスをうまくとっていくことで、“片方がダメでも別の方に行くと楽しい”と感じられる。中1の段階では、まだ自信には至らなくてもいい。今いる場所に居心地のよさを感じることが大事なんです。そうすることで、次のステップへと進みやすくなります。
――次のステップとは?
柳沢 “情熱を持って打ち込める何か”を見つけると、成功体験がグッと得やすくなります。自分自身が興味を持って選んだことですから、たとえすぐに結果が出なくても、投げ出さずに取り組める。そうして努力を続けるうちに、徐々に出来るようになっていきます。陸上であればハードルが飛べるようになったり、英語なら少しずつ会話できるようになる。
努力と鍛錬の積み重ねによって物事が着実に身についていくという実感を得ることで、自信は育っていきます。成果が出るまでには、目に見えない期間、いわば卵を抱いているような期間があることを知れば、その後何かに取り組む時もコツが分かるし、すぐに挫折せずに済む。教える側としても非常にスムーズなんですね。
――勉強以外の成功体験を積ませるというわけですね。
柳沢 もちろん受験に合格したこと自体も立派な成功体験ですが、それは“親がかり”の成功体験に過ぎません。しかし、課外活動は子どもが自分自身で選ぶものです。“自分で選んだもので達成感を得る”という経験が何よりの自信になることは、前回もお話した通り。
ですから我々の役目は、生徒たちが「これをやりたい!」と思えるものを見つけさせる手助けをすることだと思っています。そして、そこで得られる小さな成功体験をなるべく早い段階でつかませたいのです。