その背景には、「世界で最も新しいものを最初につくる」という明確なビジョンと、高い技術力があった。それが、トランジスターラジオ、カラーテレビ、ウォークマン、ハンディカム、プレステと次々にヒット商品を生み出す原動力になった。その原動力があったからこそ、ソニーは世界有数の企業にのし上がった。

 ところが1995年に出井社長が就任して以降、ソニーが大きく変貌することになる。出井社長は欧米流の経営手法を取り入れ、EVA(経済的付加価値)などの管理体制をつくった。そうした短期的な収益性などを重視する経営では、今儲かっている事業分野を重視することになりがちだ。

 その結果、長い時間をかけて“新しいもの”をつくる部門よりも、手っ取り早くすぐに儲かる金融などの分野の重要性が高まる。今のソニーの場合には、稼ぎ頭は生命保険などの金融部門になってしまう。

「モノづくり」は蘇るのか?
ソニー凋落と復活のケーススタディ

 それが一概に悪いというつもりはない。しかし、そうしたスタンスによって、ソニー創設以来最も大切にしてきたコアコンピタンス(企業の核心部分)であった“モノづくり”のカルチャーを失ってしまったと言えるだろう。

 ソニーOBが異口同音に指摘するのは、モノづくりや技術に対する意識が低かった出井伸之氏と、同氏が後継のリーダーに選んだハワード・ストリンガー氏の2人が経営者であった時代に、ソニーのモノづくり企業としての凋落が始まったということだ。そして現在、わが国の主要電機メーカーの中で、ソニーが一人負けの状況になっている。PS4の好調な販売だけで、その状況を大きく変えることは難しかろう。

 そうした閉塞感を打開するのは、経営者が同社にとって最も大切で、優位性を持てる要素を再確認し、それを従業員にも消費者にも明確に示すことだろう。そして時間をかけて、もう一度「モノづくりのソニー」を復活させることだ。それができないと、我々が考えるソニーはなくなってしまうかもしれない。