最近は、メジャーメディアから離脱した個人ジャーナリストが、小粒ながら視点が鋭く、専門分野に特化したサイトをつくる動きが方々で見られる。それなりにバックアップ資金もつく。ひょっとすると、こういうのがこれからの新しいメディアとして生き延びていくモデルなのかと思わせるものがある。
その1つが、ワシントンポスト紙上の「ウォンクブログ」というセクションで政治、政策、経済をテーマにしていたエズラ・クライン氏の再出発だ。
ウォンクブログは当初クライン氏が始めたもので、その後8人のスタッフが加わった。政策や経済を深く分析し、他のブロガーの記事にも言及。1つのできごとや問題について、幅広い視点を与えるのが特徴だった。
ニュースを追うだけの記事とは異なり、問題を理解するための視点を提供することが好まれ、ウォンクブログはワシントンポストで最も読まれるセクションになっていた。いわばワシントンを拠点とする、ワシントンポストならではの看板ブログになっていたのだ。
そのクライン氏は、テレビや他のメディアでもコメンテーターとして知られる存在だったが、最近になってワシントンポスト紙を辞め、新興メディア会社「ヴォックス・メディア」へ移ると明らかにした。
ヴォックス・メディアは、テクノロジー情報の「ザ・ヴァージ」、不動産や都市情報の「カーブド」、食とレストラン情報の「イーター」など、種々のブログを運営する。今はまだ「プロジェクトX」としか名付けられていないクライン氏の新しいブログも、ここで始まる予定だ。
クライン氏の独立メディア構想を
ジェフ・ベゾスCEOは却下
クライン氏は、ワシントンポストを辞める前にウォンクブログを独立したサイトとして運営するためとして、1000万ドルの投資を同紙に提案したらしい。その詳細は不明だが、ワシントンポストの傘下にありながら、独立した組織としてウォンクブログというブランドを立ち上げようとしたのだろう。
ところが、ワシントンポストはこれを却下。同紙のオーナーはアマゾンCEOのジェフ・ベゾスだが、別の額を提示することもせずににべもなく却下したらしい。その結果、クライン氏は同紙を辞めてヴォックス・メディアへそのアイデアを持っていくことになったわけだ。そして、移行に際してウォンクブログに携わっていた他のスタッフも少なからず引き連れていく模様だ。