では、そんな役に立たない代物に価値なんてあるのかと思われるかもしれませんが、それはあるのです。貨幣として使われているもの、あるいは使われていたものを大きく分類すると、「実物貨幣」と「信用貨幣」になります。実物貨幣というのは、要するに貨幣として使われているモノ自体に価値があるというタイプの貨幣で、具体的には、古代メソポタミアの貨幣であった大麦や銀から始まり、後に貨幣の主役になった金貨、そして日本では銭と呼ばれていた銅貨などがこれです。

 一方、信用貨幣は、そのモノ自体に価値があるのではなくて、貨幣を発行した主体の信用に依存する債務証書のような貨幣で、円やドルなどの銀行券だけでなく、たとえばSuicaような電子マネーだって、それが発行体であるJRの信用に依存するという意味では信用貨幣です。

 こうした観点からビットコインを分類すると、それはSuicaのような信用貨幣の発展形としての電子マネーではなくて、金貨や銀貨の仲間、つまり実物貨幣のネットワーク版あるいは仮想空間版であると言えるでしょう。

――ただ、日銀券のような「法貨貨幣」は、1万円なら1万円で通用するように法的な強制力があります。ビットコインの価値はどのようにして決まるのでしょうか。

 ビットコインの価値を考えるには、典型的な実物貨幣ともいえる金あるいは金貨の価値が、どう決まっていたかと比較しながら考えるのが分かりやすいでしょう。そうした観点から言うと、金という金属自体は、その使用価値こそ装身具にしたり金歯にして使えたりするという程度で、それほど大きなものではないのですが、それでも金貨を新しく作るためには、採掘精錬費や鋳造研磨費あるいは流通管理費というような「費用」がかかる。

 もし10万円の費用がかかるのなら、市場でそれだけの価値があるものとして扱われなければ、誰も金貨を作ってくれなくなってしまうという文脈での価値はありますね。こうした考え方を経済学では限界費用価格とか限界費用原理と言います。要するに、金貨の価値を決めていたのは、金貨をもう1枚追加的に製造するときにかかる限界費用だったと考えるわけです。

 で、そうした限界費用という観点からビットコインを考えると、ビットコインの正体は実は何の意味もない数字列で、貨幣として使えるという以外の使用価値自体はゼロなのですが、でも、ビットコインとしての条件を満たす数字列あるいはビット列を発見して確認するのには、相当の計算処理費用がかかります。それなら、ビットコインにも限界費用価格が成立するだろう、ビットコインを発見するための計算処理費用が、ビットコインの限界費用価格つまり市場価格だという考え方もできそうです。