撮影:宇佐見利明 |
今回の経済危機は、過去の延長線上になく、トンネルの先には、これまでとは違った景色が広がっている。2003年に三菱商事と双日の鉄鋼部門が統合して誕生したメタルワンも、パラダイムシフトを迫られる。
GMがかつてなら考えられない状況に陥り、トヨタ自動車ですら大幅な赤字を計上した。自動車産業の裾野は広く、当社は下請けにまで幅広く材料を供給してきたが、自動車も含めて日本の製造業の生産レベルが、経済危機以前に戻るとは考えにくい。
そうなると、当社が全国に持つコイルセンターは供給過剰となり、設備の集約が必要だ。対応策として再編の可能性もある。
コイルセンターの損益分岐点は70数パーセントだが、5月の稼働率は5割にすぎない。日本の造船産業は、4年後以降の受注がゼロに近い。嵐が過ぎ去ったとしても、もう元には戻らない。
新たなコアビジネスの育成が急務だ。風力発電などのエネルギー分野、電気自動車などの環境分野にも注力していく。これまで積極的ではなかったが、500兆円といわれる世界的インフラ整備の流れにも対応する。鉄鋼需要が増えるブラジルへの投資も拡大する。
鉄鋼業界は長らく、サプライサイドに主導権があったが、足元は需要が落ち込み、販売力がないと売れなくなった。そこで重要となるのが、総合力を持った商社の存在だ。三菱商事と双日を親とする当社だが、両社との協業はあまり進んでいなかった。今後は、親とのシナジーを強めていく。(談)
(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 山口圭介)