いよいよ今年4月から、消費税率が8%に引き上げられる。さらに1年半後には、10%までの引き上げも待っている。激動の時代を生きるビジネスマンは、消費税に関する知識を今から身に着けておかないといけない。消費税に関する用語を、ジャンル別にわかり易く解説した。最終回は、販促コンサルタントの竹内謙礼氏監修による「増税後の動き・対策に関する用語編」をお届けしよう。第1回から続けて読めば、あなたはちょっとした「消費税の専門家」になれるだろう。

【買い控え】

 消費税増税前の「駆け込み消費」の反動で、消費が冷え込む現象のこと。特に高額商品、贅沢品の消費に大きな影響を与える。また、消費マインド全体が冷え込んでしまうこともあり、買い控えの影響は低額の食料品や衣料品にまで派生することが予想される。

 反面、ディスカウント商品や節約系グッズ等の買い控え時に有効な商品やサービスも多々あり、増税後の買い控えを逆に商機ととらえる事業者も多い。リーマンショック時と震災ショック時の買い控え期の販促戦略を検証することで、対策を立てることが可能である(図1参照)。

【参考】消費税アップ直前に100名に聞いたら、3割が「駆け込み消費する」と回答(経営コンサルタント 竹内謙礼ブログ)。Q6に「買い控え」アンケート結果

【2014年4月1日、および2015年10月1日】

 消費税増税後の初日。2014年4月1日が「火曜日」、2015年10月1日が「木曜日」となる。過去の消費税増税の場合、初日から商品の買い控えが始まり、前日の駆け込み消費とは打って変わって商品が売れなくなる。そのため、心理的な焦りを抱えてセール販売を慣行する事業者も多いが、消費意欲が大きく減退していることもあり、芳しい販促結果にはならないことが多い。また、システムトラブルや接客によるトラブルも発生しやすい日でもあるので、人材の確保は事前におこなっておいたほうがいいだろう。

【プライベートブランド(PB)】

 スーパーやデパート、百貨店などがみずから 企画生産して販売する独自のブランド商品のこと。一般にメーカー製品(ナショナルブランド)より割安になるケースが多い。「自主企画商品」「PB」とも言う。その価格の優位性から、消費税増税後は、売り手側が商品価格を自由にコントロールできるプライベート商品に注目が集まることが予想される。

【モニター企画】

 “モニター”と称して、割引価格で商品やサービスを提供して、消費者と接触頻度をあげる販促企画。増税後の買い控え期に提案することで、節約モードの消費者の財布を緩めるきっかけをつくることができる。また、接触頻度を高めることで優良顧客の育成にもつながるので、買い控え期にモニター企画を展開する事業者は多い。

【訳あり企画】

 正規商品の傷ものや、半端もの、型遅れ商品など、何かしらの事情で通常の販売ルートに乗せられない商品のこと。ひと昔前に比べて、アウトレット品やB級品に対して抵抗感を持っている人が減っていることもあり、販促企画のキャッチコピーに用いれば、増税後の冷え込んだ消費の中でも、ある一定数のお客さんを確保することが可能である。

 マンションや中古車のような高級品の他に、高級スイーツや缶詰、日用雑貨にも幅広く活用できる販促企画なので、売上が低迷した際に展開してみるといいだろう。類似のキャッチコピーで“プロ用”“業務用”という言葉を使ってみるのも一手だ。

【限定企画】

「個数限定」や「日付限定」の販促企画。“この日、この場所、この時間”でしか買えないことを意識させて、お客さんの購買意欲を高めてくれる。新商品でも、ある一定の期間しか製造しないものや、そのお店でしか販売していないもの、3日間しか販売できないものなど、「今、買わなくてはいけない」という販促企画を展開するところがポイント。特に増税時期を4月1日と仮定した場合、春限定、ゴールデンウィーク限定、母の日限定等、この時期は限定企画が組みやすい時期でもあるので、積極的に展開することをお勧めする。

【社員割引企画】

 自社の社員に向けた販促企画。増税後は、ただでさえ新規顧客に商品が売り込みにくいところがあるので、社員や取引先を対象にした販促企画を展開してみるのも一手。社員割引や取引先割引という大幅値引きの企画を展開して、一般の人には告知しないクローズドなイベントとして“限定感”を演出するといいだろう。

 また、社員の関係者なので集客もしやすく、働いていたり、取引があったりする間柄なので、短期間のイベントでも売上を作りやすいというメリットもある。増税直後で集客に苦しむ会社やお店であれば、一考の価値がある販促企画と言える。

【コラボレーション企画】

 他の会社やお店と合同でイベントを開催したり、共同で商品を開発したりすること。カレー屋さんとパン屋さんが協力してカレーパンをつくったり、マンションの展示会で、中古車の展示即売会を展開してみたり、お互いの商品やサービスの特性を生かして、相乗効果で売上アップを狙うイベントが展開できる。

 このような企画は、増税前の安売り合戦とは趣向の違った販促企画となり、お客さんの注意を引くことに一役買ってくれる。また、お互いの抱えているお客さんを相互交換できるメリットもあるので、集客の苦しい増税後には、うってつけの販促企画と言ってもいいだろう。

【レンタル事業】

 出費を抑えるために、商品をレンタルする人が増えることが予想される。自動車や自転車をはじめ、ブランド品や調理器具、洋服やアクセサリーのレンタル事業は増税後に需要が高まる可能性がある。特に4月1日、10月1日の増税直後にはゴールデンウィークが待ち受けていることもあり、レジャー用品のレンタル事業は狙い目と言える。

【中古品の販売】

 消費税増税後は、出費を抑えるために、中古品を買い求める人が増えることが予想される。また、中古販売店の人気が高まりにあわせて、買取事業も活性化することが考えられる。この流れに便乗して、自社商品の中古品を販売してみたり、ネットオークションに出品してみたり、従来にはない中古品販売ルートを模索してみるのもいいだろう。

【下取り企画】

 お客さんが節約モードになると、“下取り企画”が集客イベントとして効果を発揮する。リーマンショック時には、家庭でいらなくなった商品を、店舗が発行する金券と交換するサービスで、断捨離ブームに乗って、多くの百貨店がこの企画で集客数を伸ばした。いらないものがなくなるメリットと、いらないものが金券に変わる両方のメリットが生まれる販促企画なので、集客の苦しい時期にはお勧めのイベントと言ってもいいだろう。

【小分け】

 従来の容量を減らして、1人分、もしくは少量にパッケージングした商品のこと。核家族化、高齢化にともなって、大容量の商品よりも、少量化の需要が高まっている。消費税の増税を機に、容量を減らした商品の小分け化が進むことが予想される。

【3コウ消費】

 商品の付加価値を高めるポイントを3つに絞ったキーワード。(1)素材やつくりがしっかりした「“高”品質」、(2)デザインや雰囲気が好みに合う「“好”感」、(3)自分にとってどう役に立つかが明快な「“効”果」。この3つの“高・好・効”をとらえて、“3コウ”と言われる。増税後には物価高が予想されており、商品を“高く売る”ということが、より一層、中小企業に求められる。その際、この“³コウ”を意識して商品やサービスを検討することが、売り手側には必要である。

【野菜消費】

 消費税増税後に、食費を抑える消費者が野菜の消費に積極的になることが予想される。近年の健康ブームの後押しもあり、ビジネスチャンスが大きい商品カテゴリーと言える。調理器具全般の他、日曜菜園道具、野菜ドリンク、野菜関連の健康食品、野菜スイーツ、ピクルスや漬物などの商機が高まる。

【ゴールデンウィーク】

 4月から5月にかけて発生する大型連休。2014年は増税後ということもあり、節約意識が高い時期が重なり、遠出の旅行の減少が予想される。いわゆる“安・近・短”の施設に注目が集まり、商店街、およびショッピングセンター等の集客力は高まる可能性が高い。この日にあわせて優良顧客向けの販促企画を展開してみるのもいいだろう。

【母の日】

 消費税増税後の「母の日」(5月第2日曜日)は、買い控えのモードから消費者が脱していない状況。このような時期は、スイーツや雑貨の“オマケ付”の母の日ギフトの需要が高まる傾向にある。また、鉢植えカーネーションなどの“長持ち”をテーマにしたギフトは、消費が冷え込んでいる時期は消費者の支持を受けやすい。

【父の日】

 消費税増税後の「父の日」(6月第3日曜日)は、“名入れ”や“オーダーメイド”等の、付加価値が伝わりやすいギフトサービスの人気が出ることが予想される。

【ブラジルW杯(ワールド・カップ)

 2014年6月12日から7月13日にかけて、ブラジルで開催されるFIFAワールドカップ。日本との時差が大きく、試合はほとんど深夜、早朝が予定されている。そのため、外食産業に与える打撃も大きく、消費税増税の買い控えの追い討ちになる可能性もあるので警戒が必要。持ち帰りの内食を展開したり、パブリックビューイングの企画を展開したりして、なんらかの対策を早めに立てたほうが得策と言える。

【参考】ブラジルワールドカップ 日程(スポーツナビ)

【人材流出】

 消費税増税後は買い控えの影響で、一部企業で業績が悪化。そのため、リストラが慣行されて、人材の流出が激しくなることが予想される。特に業績悪化に伴って、優秀な人材が少人数で会社を切り盛りする会社が増加。多忙な業務に嫌気をさして、優秀な人材が会社を辞めて独立起業、転職することも考えられる。人材流出、人材確保の両方が活発化する時期と言えるだろう。

【2015年の消費税2%増税】

 2015年10月1日に予定されている消費税増税。2014年4月1日の増税から1年6ヵ月しか期間をあけていないこと、また2%という税率のため、駆け込み消費は3%の増税時よりも低いことが予想される。短期間で段階的に消費税を増税させることで、増税ショックによる駆け込み消費や買い控えを和らげる狙いもあるが、反面、長期間にわたる消費低迷を発生させる可能性もあり、日本初の二段階による消費税アップの経済に与える影響は、未知数と言える。

 また、過去の消費税増税が、すべて4月増税だったこともあり、 10月1日の増税によって、駆け込み消費の商品や買い控えの商品が大きく変わることも事前に考慮する必要がある。

【軽減税率(複数税率)】

 標準税率より低く抑えられた税率のこと。食料品や衣料品などに軽減税率を採用することで、低所得者に対しての税負担を軽くすることが目的となっている。欧州諸国では比較的多くの国が採用している税率ではあるが、反面、対象商品の線引きが難しく、導入には慎重な対応が求められる。

 2015年の10月1日の2%増税時に導入される予定だったが、2013年12月の予算案で即時採用は見送りとなった。しかし、2014年4月以降に再度、導入が検討される予定となっており、2014年の年末までにはガイドラインが確定する予定になっている(諸外国の軽減税率は下記の表2を参照)

【2015年の「シルバーウィーク」】

 2015年10月1日の増税時の駆け込み消費期は、「9月」となる。この年の9月は6年ぶりの5連休「シルバーウィーク」が控えており、旅行関連の駆け込み消費が期待される。また、連休を利用した駆け込み消費の販促企画も組みやすく、積極的な販促戦略は事前に立てておく必要があるだろう。

【2015年の「年末商戦」】

 2015年10月1日が8%→10%への消費税増税ということを考慮すれば、10月、11月、12月の3ヵ月間は、買い控えが発生することが予想される。2回目の消費税増税が年末商戦に大きな影響を与えることは必至。このような近い将来の大きな買い控え時期のことを考慮すれば、2014年4月1日は2回目の消費税増税の“予行練習”と捉えて、できるだけ安売りをせずに乗り切る戦略を実践したほうがいいだろう。

【高税化社会】

 高い消費税率が導入された社会のこと。欧州諸国に比べて日本の税率はまだまだ低く、福利厚生の充実を考えれば、将来的に消費税が欧州諸国並みの20%前後になる可能性は高い。このような高税化社会に向けて、日本の中小企業は「高く売る」という技術を早急に身につけて、高い利益と売上を確保する戦略を実践する必要があるだろう。


【参考資料】

『消費税引き上げ対策早わかりハンドブック』
 東京商工会議所が制作した消費税対策の小冊子。イラスト解説で分かりやすく要点をまとめている。

 ※PDFダウンロード

・『消費税の円滑かつ適正な転嫁のために』
 内閣官房、内閣府、公正取引委員会、消費者庁、財務省が共同で制作した消費税対策の小冊子。「消費税引き上げ対策早わかりハンドブック」に比べて、禁止事項が明確に解説されている。

 ※PDFダウンロード

『消費税アップを逆手にとる販促テクニック』
 今回の用語集を制作した、経営コンサルタント竹内謙礼が執筆した消費税増税対策の本。消費税による駆け込み消費や買い控えの対策を分かりやすく解説している。

 ※Amazonにて販売中

消費税引き上げ問題
 消費税増税に関する最新情報が入手できるヤフーニュース。ここの情報をブックマークしておけば、消費税対策の最新情報に乗り遅れることはない。

 ※ヤフーニュース【消費税引き上げ問題】