段階を追って「視界」を狭めていく
クレームを解決するには、その実態がわからなければ、どうにもなりません。事実関係だけでなく、相手の動機や目的にも目を向ける必要があります。
ところが、クレーマーの正体を突き止めるのは容易ではありません。かつては、一見してそれとわかる風体でイチャモンをつけてきたクレーマーも、いまでは善良な市民を装って忍び寄ってきます。表面的にはスマートな紳士や温厚な主婦であっても、いつモンスター化するか、わかったものではありません。
クレーマーが怒鳴っているからといって、「お客様がキレてしまった」と考えるのも早計です。金品目的の悪質クレーマーが計算ずくで、大声を出しているのかもしれないのです。
また、クレーマーが理不尽な要求をするとき、思い入れが強すぎてモンスター化したのかもしれないし、クレーム担当者の初期対応のまずさからヘソを曲げてしまったのかもしれません。もちろん、はじめから金品目的で狙い打ちされた可能性もあります。
そもそもクレームの発生時点では、クレームの主が「被害者」なのか、「加害者」なのかさえはっきりしません。クレームの原因がこちらの過失であることもあり得るし、双方に過失が認められることもあります。担当者は、まさに暗中模索です。
では、どうすればいいのでしょうか?
それは、対応の段階によって、「視界」を調整することです。まず、「親身」の段階では、視界を大きく広げて目配り・気配りをします。そうしなければ相手はなにが不満なのか、なにが目的なのか、まったく見当がつかないからです。