前回はクレーム対応の基本の行動原則1として、クレームの悪質度に応じて「顧客満足」から「危機管理」へと切り替えることを示した。今回は行動原則2「親身・受身・捨身で解決のタイミングを図る」、行動原則3「段階を追って視界を狭めていく」について解説する。
クレーム解決のチャンスは3回
トラブルの発生から解決までのプロセスは、スキーのジャンプ競技にたとえると、わかりやすいでしょう(図参照)。
まず、ジャンプ競技でのスタートは前屈みになり、低姿勢で風の抵抗を受けないようにします。トラブル対応でいえば、なにはともあれ相手の興奮を鎮めることを優先し、目線を低くしてお詫びするというスタイルです。
この段階では、お客様の要求が正当である場合も多いので、まずは相手の言い分を共感をもって傾聴しなければなりません。「顧客満足」を念頭に置き、相手には「親身」な態度で接します。
クレームの多くは誠心誠意、お詫びすることで収束に向かいます。ここが、クレーム解決の最初のチャンスです。つまり、「謝って済む問題」に持ち込むわけです。
次に、ジャンプ台を踏み切って風に乗ります。これは、クレームの実態を把握する段階に相当します。お客様とのやりとりを通じて、動機や目的を見極めるのです。いわば、「受身」の姿勢で臨みます。得体の知れない相手を前にして、ハラハラ、ドキドキしますが、それは空中で落下の恐怖と戦っているジャンパーの姿に重なります。
しかし、ここをうまくクリアできれば、クレーム解決の2回目のチャンスが訪れます。お客様の言い分を聞き、妥協点を見出すことができれば一件落着です。