今回は、テレビ番組の撮影中に起きたトラブルを今も思い煩う、28歳のアシスタント・ディレクター(AD)を紹介したい。この男性は現在は無職だが、数年前までテレビ番組制作プロダクションに勤務し、ドキュメンタリーや情報番組を制作していた。
あるとき、難病の女性とその家族らの介護をテーマにした番組をつくった。この制作の最中に、女性は「謎の死」を遂げた。今も詳細は男性に知らされていない。
そのとき男性は、上司であるディレクターに利用されるだけ利用されたという、無念な思いがある。だが、このトラブルについて関係者は「黙秘」を貫く。彼はそんななか孤立し、退職した。
程度の差はあれ、職場で知らず知らずのうちに仕事の失敗の責任を押し付けられる会社員は少なくないだろうが、時にはそのことが1人の社員の人生を狂わせてしまうこともあり得る。こんなところにも「悶える職場」の底知れぬ闇があるのだ。彼の胸中はいかほどのものか。読者諸氏にも一緒に考えてみてほしい。
番組製作会社が闇に葬った不祥事
ドキュメンタリー撮影で起きた惨事
現在、竹下(仮名・28歳)は無職。今後の進路を模索しながら、ガードマンのアルバイトをして生活費を稼ぐ日々だ。
昨年の暮れまで、都内のテレビ番組制作プロダクション(正社員数20人ほど)(①)に勤務し、ドキュメンタリーや情報番組を制作していた。ディレクターではあるが、キャリアはまだ浅い。1時間もののような長い放送時間の作品には、アシスタント・ディレクター(AD)として加わっていた。
一昨年の冬(2012年)、トラブルが生じた。そのトラブルについての詳細は、今も番組関係者の間で伏せられているという。
都内にある一家がいた。取材対象はこの家族だった。父親は70代前半、母親は60代前半。その間に生まれた30代半ばの長男と20代後半の嫁、さらに小さな子(3歳)がこの家に一緒に住んでいた。