戦後ずっと封じ込められてきた「愛国心」。今、その呪縛は解け始めた。若者の間でも、日本の魅力が普通に語られるようになった。こうした愛国心の復活と共にかつてない盛り上がりを見せているのが、憲法改正論議だ。「強い日本を取り戻す」という安倍首相の信念や自民党の憲法改正案は、国民から一定の支持を得ている。しかし一方で、96条の先行改正や集団的自衛権の解釈変更が、国民的な議論が不十分なまま性急に取り沙汰されるなど、昨今の改正論議には危うさも漂う。憲法改正を通じて日本の将来像を考えることは、国を愛する意味でも重要なこと。変えるべきものは何か、逆に変えてはいけないものは何か――。我々は憲法改正の意義について、もっと深く考える必要がある。「愛国心」という観点から憲法改正の意義を唱える気鋭の憲法学者、竹田恒泰が語る憲法改正の論点を2回に分けてお届けする。今回は、96条改正と集団的自衛権について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

愛国心を封印する呪縛は解け始めた
憲法論議は国を愛することにつながる

――まず、現在の憲法改正論議をどう見ていますか。竹田さんは著書『日本人はいつ日本が好きになったか』(PHP新書)でも、「国を愛する心」という観点から憲法改正を多面的に語られています。

たけだ・つねやす
作家、法学者、専門は憲法学。慶應義塾大学法学研究科(憲法学)講師、担当は「憲法特殊講義(天皇と憲法)」。1975年生まれ。東京都出身。旧皇族・竹田家に生まれ、明治天皇の玄孫に当たる。慶大法学部卒。2006年著書『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)で第15回山本七平賞を、08年論文『天皇は本当に主権者から象徴に転落したのか?』で第2回「真の近現代史観」懸賞論文・最優秀藤誠志賞を受賞。『旧皇族が語る天皇の日本史』『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』『日本人はなぜ日本のことを知らないのか』『日本人はいつ日本が好きになったのか』(以上PHP新書)、『日本人の原点がわかる「国体」の授業』(PHP研究所)、『現代語古事記』(学研M文庫)など著書多数。

 憲法改正が公然と論議されるようになったのは、本当に最近のこと。私が学生の頃は、憲法改正を口にしただけで「軍国主義」などと言われたものです。しかし、日本国憲法には、第96条に改正手続きの要件が書かれているので、改憲を論じることは憲法破壊でも軍国主義でも何でもないのです。

 そもそも自民党は、結党の精神そのものが憲法改正だったはず。しかし、5月の憲法記念日に「憲法を変えるぞ」と威勢のよいかけ声を上げるだけで、実質的に何の審議もしてこなかった。第一次安倍内閣で国民投票法が成立してから流れが変わり、第二次安倍内閣以降に憲法論議が盛り上がったこと自体は、いいことだと思います。憲法を語ることは、国を真剣に語ることにつながりますから。

 私は憲法学者として、憲法を語り、憲法を考えることにロマンを感じます。日本をどのように、どんな方向へ発展させていくかという国の将来像を、憲法改正を通じて考えることは、本来非常に健全なこと。それこそが「国を愛する」ということです。