「誤報だらけだ。朝日も、日経も、日本の新聞はいったいどこを取材して記事を書いているんだ。石油メジャーや石油連盟のプロパガンダに乗っかり、単純化したバイオ燃料悪玉論ばかりを報じて続けている。〈さとうきび〉のブラジルと、〈とうもろこし〉の米国とは根本的に生成が違うのに、同じ食糧価格高騰の犯人だと決め付けている」
5月、ブラジルを訪れた筆者に、猛烈な勢いで怒りをぶつけたのは政府関係者のひとりだった。その直前、首都ブラジリアで開かれていたFAO(国連食糧農業機関)の分科会でも、ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領が、国連担当官に対して次のように激しい怒りを表明していた。
「バイオ燃料を排斥することこそが、本当の意味での『人道に対する罪』だ。排斥は、食糧とエネルギーの不足に苦しむ国々の依存度を高め、不安定化させることでもある。バイオ燃料が食糧価格の高騰を招いているというFAOの批判には驚きを隠せない」(AFP/2008年4月18日配信)
バイオ燃料批判派が
主導する食糧サミット
ルラ大統領の怒りの発端は、4月14日、ジャン・ジグレール国連特別報告官が、ドイツのラジオ番組で「バイオ燃料の大量生産は世界の食糧価格を破壊する『人道に対する罪』だ」と発言したことだ。
当初、CO2排出量を抑え、環境に優しいとされたバイオ燃料だったが、こうした批判によって一転、食糧危機の「戦犯」にされてしまっている。アマゾンの熱帯密林を焼畑によって消滅させ、本来食糧であるはずの植物を、燃料として使うという政策によって穀物市場の高騰を招き、それが世界的な食糧難を招いているというのがバイオ燃料批判派の言い分だ。
とりわけバイオ燃料に批判的なのがFAOだが、きのう(3日)からイタリア・ローマでは、そのFAOによる「食糧サミット」がはじまっている。
福田首相も出席しているこの会議は、世界的な食糧価格の高騰の中で、これまでになく注目を浴びている。中でも、4月のブラジリアでの分科会の時と同様、バイオ燃料「戦犯」論が会議の主要テーマになっている模様だ。