トヨタ自動車の“伝説の名車”をオマージュした「FT‐86Concept」が東京モーターショーでお披露目される。
このクルマはトヨタと富士重工業が共同開発し2011年末に市場投入する小型FR(フロントエンジン・リアドライブ)スポーツ車のコンセプトカーで、水平対向エンジンを搭載し、キビキビとした走りが特徴だ。
車名の「86」は、共通車台番号が「AE86型」ということから俗に“ハチロク”と呼ばれ、1980年代にヒットした「カローラレビン」「スプリンタートレノ」にちなんでいる。操縦性は高いが安価なスポーツカーとして、生産中止となって久しい今なお根強いファンを持ち、90年代後半からは「頭文字(イニシャル)D」という漫画に登場した影響から日本のみならず米国でも新たなファンを生み、中古車はプレミア価格が付いている。
そんな伝説の名車を復活させる背景には、国内市場の縮小と、その一因である若者のクルマ離れに歯止めをかける狙いがある。
市販の際のメインターゲットは当然、往年のハチロクファンだが、その先のクルマにあまり興味のない層まで裾野を広げる意向で、価格が焦点になりそうだ。先代ハチロクの当時の価格は160万円前後。そこまで安くなるかは未定だが、「新・小型FRスポーツ車の価格は300万円はもちろん切り、250万円前後、さらにはそれ以下を目指したい」(多田哲哉BRスポーツ車両企画室長)。
企画発案は3年ほど前から始まり、豊田章男社長も開発に期待。試乗の際にはテストドライバーの経験から、クルマの乗り味について意見したという。
また、販促方法も従来とは一線を画し、バーチャルゲームやインターネットを通じて新たなクルマの楽しみ方を提案する予定だ。
このクルマが起爆剤となってトヨタスポーツブランドの再生、ひいては若者のクルマ離れに、一石を投じることになるだろうか。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 柳澤里佳)