まず目につくのが「全ページ試し読み」ができるサービスがあるということだ。これは、まさに親が子供に適した絵本を「手軽に」「確実に」選択するという用事を効率的に叶えてくれるサービスである。また、絵本を検索する場合においても、カテゴリー分けとして、年齢別に分かれていたり、「夏におすすめ」という季節別、または「母親が泣ける絵本」という属性まで存在したりする。これも、母親が用事に直面する場面を想像しているからこそ、対応できるサービスだ。本文中にもある通り、母親の用事ということにまったく注目していないアマゾンなどのECサイトには無理な芸当だろう。

 さらに、有料コンテンツにおいては、絵本のムービーがスマートフォンなどを通じて見放題、というものも存在する。これは、子連れで外食する際に、子供を大人しく着席させる、という用事にも着目したものだと考えられる。

 以上に見られるとおり、全ては、親が子育ての場面においてとっての片付けるべき「用事」を特定し、その用事ごとにソリューションを提供しているのである。

喚起される「感情」に対処する

 しかし、ここで一つの大きな疑問にぶつかる。

 果たして、絵本ナビが片付ける用事というのは、どれだけ大きなものなのであろうか?確かに、絵本を選ぶということは、親にとってひとつの用事であることは間違いない。しかし、これは親にとってどれだけ大きなインパクトのある用事だろうか?存在しなかったらなかったで、なんとでもなることではないか?金柿さんの目には、どうしてこれがひとつの「サービス」として、大きく成長すると思えたのだろうか?

 そう考えると、この”Jobs to be Done”という考え方には、もう一つの側面が必要だということに思いが至る。

 それは、

 「用事を片付ける」×「喚起される感情に対処する」

 という公式である。

 つまり、本当に顧客の心を捉えるサービスの本質というのは、「片付けるべき用事」を確実にこなすとともに、「そこから喚起される感情」に対しても、同時に対処する、という側面があるのではないだろうか。

 これはそんなに難しい話ではない。

 たとえば、人はなぜ高級車を買うのだろうか?移動する、という用事を片付けるためであれば、今の車のクオリティであればどんなに安い車でも対処できる。しかし、車にはもう1つの側面がある。「こういう人だと見られたい」という感情に対処するための自己表現ツールでもあるのだ。