この「感情」に着目することを、経営用語では「インサイト」という言葉で表現する。桶谷功氏の著書『インサイト』には、「インサイトの本質は、消費者に行動を起こさせる点にある。インサイトは、いわば消費者の『心のホット・ボタン』なのだ。」という表現がある。まさに消費者自身も完全に理解していない感情の「ホット・ボタン」を探り当て、それを戦略に取り入れるということだ。

 金柿さんが参考にしたというクックパッドも「インサイト」の観点で似たような側面がある。「今晩のメニューを考える」、という用事を片付けるとともに、「このレシピを人に伝えたい、認められたい」という喚起された感情にも同時に対処できる作りになっている。これが、クックパッドの強い吸引力に寄与していると考えられる。

 では絵本ナビにおいてはどういうことだろうか?

 絵本ナビは、単に絵本を選ぶという「用事を片付ける」以上の何かがあるのだろうか?これは、絵本ナビに実際に訪問し、その絵本の紹介文に目を通すと理解できる。

ファーストブックはこの「おつきさまこんばんは」でした。
娘は0歳時代、絵本は全く興味を持ちませんでした。
かんだりなめたりと完全なるおもちゃと化してました。
それが、1歳過ぎたあたりからこの「おつきさまこんばんは」を読むととっても目をキラキラして一緒にこんばんは!とお辞儀をしたりダメダメ雲さん!と首を振ったりあーよかった!と笑顔振りまいたりで娘がストーリーを理解してる!!と感激の絵本でした。
それからというものこの絵本が大好きで、朝から片手に持ち歩いては「読んでー」とせがんできます。
ぐずって泣いてても、「おつきさまこんばんは!」とそっと耳打ちすると泣き止んで、ダー!と絵本棚へ駆け寄りこの絵本を持ってきます。
あんなに興味なかったのが嘘のよう、いまでは絵本大好きっこになりました。
寝る前の絵本タイムは欠かせません。
すべてこの絵本のおかげです。
(ゆんちゃんママさん 30代・ママ 女の子1歳)

 この典型的なコメントに分かる通り、ここに寄せられているのは、単なる絵本の評価ではない。これは各家庭における「幸せの様子の発信」なのである。

 絵本を通じた親のコミュニケーションというのは、幸せな空間であり、幸せな時間である。「そこで喚起されたポジティブな感情を残しておきたい。できればそれを多くの人と共有し、その幸せを何度もかみしめたい。」親にはそのような欲求が同時に生み出されるのだ。

 そして、絵本ナビというのは、その感情に基づく欲求に対して、確実に応えるツールとなった。金柿さんの言葉を借りれば、絵本選択サイトという以上に、「絵本ナビの本質というのは、絵本を通じた幸せな時間共有サイト」とも言えるのだ。

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 というのは、絵本ナビの経営理念であるが、その観点でみると、この経営理念が深い洞察に基づくものであるということが理解できる。