日本の中位以下と海外トップ校を比較する違和感
おそらく、分数の計算ができなかったり、基本的な英単語の綴りを間違うなど、学生の質として本当に問題を抱えているのは、トップ校ではなく大多数を占める中位層以下の大学なのでしょう。しかし、そこで起きている問題が、あたかも日本の大学すべての問題かのように議論されているのではないでしょうか。
それに加えて、なぜか、日本の大学を語るときには中位層以下の大学がクローズアップされるのに対して、海外の大学を語る際は有名校ばかりが取り上げられるのは、大きな違和感を覚えます。
実際は、アメリカでもイギリスでも、中位層以下の大学における研究や教育の問題は、日本以上なのかはわかりませんが、同じくらいは深刻なのです。
たとえば、OECDの2011年のデータによると、アメリカの高等教育機関(大学など)の中退率は47%に上ります。同様に、イギリスでも28%に上るといいます(*2)。
同じ調査における日本の数字は10%です。これを悲観的に見れば、日本の大学が入学しやすく、卒業もしやすいと主張することはできます。しかし、入学者の半数近くが卒業できない大学は、果たして本当に適切な教育を施しているのでしょうか?
イギリスの『テレグラフ』の2012年の記事(*3)が引用している、イギリス政府のデータによれば、中退率が最も低いケンブリッジ大学とセント・アンドリュース大学の学部の中退率は1.4%に過ぎず、それに続くオックスフォード大学の学部の中退率も3%に満たないそうです。
その一方、最も中退率の高いハイランド・アンド・アイランド大学は、毎年32%の生徒が中退すると言います。記事中で約15%以上の学生が毎年退学すると紹介されている、西スコットランド大学、ボルトン大学、西ロンドン大学、ロンドン・メトロポリタン大学、スウォンジー・メトロポリタン大学、ミドルセックス大学、ユニバーシティ・キャンパス・サフォーク大学、サルフォード大学の名前を知る人は、日本にはほとんどいないでしょう。
私の聞く限り、アメリカでも同様に、下位層の大学の状況は厳しいといいます。アメリカには約2800校の4年制大学がありますが、その中で、日本で話題に登場するのは、ほんの一部の限られた大学ではないでしょうか。