ハーバードやスタンフォードばかりが大学ではない

 ある調査によれば、世界には、1万校以上の大学レベルの高等教育機関が存在すると言われています(*4)。にもかかわらず、日本で語られるのは、片手で数えることができるぐらいの超トップ校だけなのです。しかも、日本で知られている大学には、かなりの偏りがあるようにも思えます。

 たとえば、大学院、とくにビジネス・スクールの著名な出身者が多いことからか、日本ではハーバード大学が極めて有名です。しかし、アメリカの学部生にとっては、ハーバード大学と同じくらい、イェール大学やプリンストン大学にもブランドがあり、由緒のある大学だと認知されているそうです。

 ただ、こうした格式のある大学に光が当たることは、ハーバード大学ほどはないように思います。

 また、アメリカ出身の友人によると、大学院が中心のこうした大学よりも、「リベラル・アーツ・カレッジ」と呼ばれる、学部生の教育に特化した大学(たとえばウィリアムズ・カレッジなど)のほうが、学部生の実際の教育は優れており、またその評価も高いとも聞きます。

 本当に優秀な学生は、大学の名前ではなく、自分の専攻や興味関心、実際の教育内容に合わせて、日本では余り知られていない、しかし自分にあった優れた教育を提供するリベラル・アーツ・カレッジを選択することも一般的だと言います。つまり、アメリカの学部生にとってみれば、スタンフォード大学やハーバード大学は、数多くの選択肢の一つに過ぎないのです。

 どれだけ正確かはわかりませんが、インターネットにリベラル・アーツ・カレッジ出身の有名人を一覧にしたページがありました(*5)。このページによると、ヒラリー・クリントン元国務長官や、ヘイズ大統領、マッキンリー大統領、レーガン大統領などをはじめ、何名もの巨大企業のCEOやノーベル賞受賞者を輩出していることがわかります。

 私にも、ハーバード大学の出身者の知人・友人がたくさんいます。とても優秀な方々ばかりで、心から尊敬しています。

 しかし、もう少し冷静なより幅広い視野をもって、特色ある試みを行う、本当に優れたその他たくさんの欧米の教育機関にも、着目してもらいたいと思うこともたしかです。