なお、同様に「ハウジング・ファースト」を提唱しつつも、公営住宅を提供する動きも米国には存在する。


ホームレス8年かけ4分の1 「無償で家」米ユタ式で成果

 経済格差の拡大を背景に定住地を持たないホームレスが増え続ける米国で、2013年までの8年間でホームレスを7割以上も減らした西部ユタ州の取り組みが注目を集めている。州政府が専用住宅をつくり、無条件・無償で入居させた。州財政を圧迫してきた緊急医療や犯罪対策にかかる歳出削減にもつながった。(略)

 州が打ち出したのが「ハウジング・ファースト(家・第一主義)」政策だ。従来のホームレス支援は飲酒や薬物の禁止といった条件に従うことが前提で、自由気ままに生きる人たちの中には支援を拒む例も多かった。そこで発想を転換して、何の条件も課さずに、まずは家に住んでもらうことを優先した。(略)

(日本経済新聞 電子版 2014/2/22 23:42
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1806B_Q4A220C1CR8000/ より)
 

「まず、居住を保障する」という方向性自体は、決して誤っていないと筆者も思う。毎日、少なくとも雨風をしのげる環境で眠れるようになることは、危険な生活から脱却するために必要不可欠なことであるし、再起のためにも最も意義ある最初の一歩であろう。しかし、ニューヨーク市が大規模公営住宅の提供で失敗した事例を知っている筆者は、「なぜ、公営住宅の建造?」という疑問を感じる。保守的な土地柄であるユタ州で受けいれられうる困窮者支援の限界が、このような方法であったということかもしれない。または、地元ゼネコンとの関係などの背景もあったのかもしれない。

 変化を恐れない米国で進められてきた、あるいは現在も進められつつある数多くの社会実験をどのようにとらえるべきだろうか? そこから何を学び、何をどのように取り入れるべきだろうか? 文化も価値観も異なる日本で、米国の取り組みに学ぶことは、決して容易なことではないと筆者は思う。少なくとも、都合のよいところだけを「つまみ食い」するような取り入れ方では、実りある成果に結びつくことはないであろう。

 次回は、ニューヨーク市で実際に低所得層向けの住宅供給に取り組むNPOと、その住宅について紹介したい。現在のニューヨーク市では、どのような人々が、どのように住宅供給に取り組んでいるのだろうか? その住宅とは、どのようなものなのだろうか?

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