ダイヤモンド社刊 2400円(税別) |
「知識は仕事や技能をなくしはしなかったが、仕事の生産性と働く者の人生を大きく変えた」(『断絶の時代』)
かつては、就ける職業は出自によって、ほぼ定められていた。ところが、知識が、職業を選べる社会に変えた。今ではいかなる種類の知識を使い、いかなる種類の仕事に就いても、一応の生活を送れるようになった。これこそ新しいことだった。
かつて教育を受け、知識によって生計を立てられたのは、ごく狭い範囲の専門職、つまり僧侶、医師、弁護士、教師、そして新参の職業たる官吏だけだった。技術者が登場したのさえ19世紀末だった。
ところが今日、たとえば数学が好きな子には、機会は無数にある。しかも、ニュートン並みの才能は必要としない。
教育が特権であり、知識が稀少物だったのが、わずか100年前である。ところが知識がものをいう社会は、これからが本番である。
さらなる豊かさを求めるにせよ、地球を救い自然に生きるにせよ、恵まれない国の人たちに手を差し伸べるにせよ、まず必要とされるものが知識である。そしてその主役は、先進国の才能と意欲のある教育を受けた若者であるはずだ。
「今日、先進国社会は自由意志によって職業を選べる社会へと急速に移行しつつある。今日の問題は、選択肢の少なさではなく、逆にその多さにある。あまりに多くの選択肢、機会、進路が若者を惑わし悩ませる」(『断絶の時代』)