これまで4回にわたり少額投資非課税制度(以下、NISA)の活用方法について述べてきました。読後、早速NISA口座を開設した行動力のあるオヤジもいるかもしれませんが、一方で自分年金と言えば、うちの会社は確定拠出年金(以下、DC)を導入していたな、と思い出した人もいると思います。そう、今や大企業の49.4%(出所:2013年日経企業年金実態調査)がDCを導入し、加入者数も465万人(2013年11月末時点)まで増えていますから、いつの間にかDCに加入している人も多いと思われます。そこで今回からは、自分年金の王道であるDCの特徴や活用の仕方についてお話ししていきます。
DCのメリット
DCのメリットは、加入者の立場によって変わってきます。立場というのは企業が提供しているDC(企業型DC)に加入している方か、そうでない方かです。まずは企業型DCに加入している方の視点から説明します。企業型DCは多くの場合、企業の財務的な負担を軽減するために確定給付年金(DB)や退職金から移行しており、DB同様、掛金は企業が払ってくれます。では、この企業型DCがDBと比べてどう違うのか比較してみましょう。
当連載でもすでに触れましたが、DCとはDBのときには企業が負っていた運用リスク(結果責任)を従業員が負わなくてはならない制度です。これだけ聞くと、運用リスクが従業員に転嫁されただけですからDCは従業員に優しくない制度と思われる方も多いでしょう。しかし、DBは企業の都合により年金額が減額されたり、最悪の場合、今ある資産を一時金で給付して終わりということもあり得ます。実際、大手企業が受給者の年金額を減額した事例もありますし、厚生年金基金という主に中小企業が共同で運営する年金制度では、基金の解散が数多く発生しています。
一方、DCは掛金を企業に払ってもらった時点で原則それは従業員のものになります。たとえ会社が倒産したとしてもDCは没収されません。このようにDBでは最悪の場合、職と年金の両方を同時に失ってしまう可能性がありますが、DCでは少なくとも年金は守られるのです。私はこの連載を通じて、資産運用における価格変動リスク以外にも、考慮しなくてはならないリスクがあると主張してきました。例えば、老後の資産運用においては長生きリスクやインフレ・リスクです。企業年金制度においても価格変動リスクだけでなく、所属企業の業績変動リスクや倒産リスクなども考慮したうえで制度を評価する必要があります。DC導入は福利厚生の悪化と捉えられることが多いですが、上述のように多面的に制度を評価していただきたいものです。