銀行窓口での保険商品販売が今月22日に全面解禁された。りそな銀行とみずほ銀行は全店で医療保険を取り扱い、三菱東京UFJ銀行は全店で死亡保険を含めた保険を販売するようだ。三井住友銀行も医療保険やがん保険などを取り扱うという。
解禁初日が土曜日だったので、休日営業店のみで、静かなスタートを切った。今のところ、銀行の対応はゆっくりとした印象だが、保険の窓販を長年要求してきた銀行業界としては、ようやくの感があろう。生命保険はセールスしないとなかなか売れない性質の商品だと言われており、銀行窓口でどれだけ売れるかは未知だが、銀行も、現在投信でやっているような積極的なセールスをいずれ開始するであろう。銀行の収益源にまた一つ大きな武器が加わった。
国が銀行強化を後押しする
銀行は、株式の直接仲介こそまだだが、証券仲介業という手段を持ち、何より子会社に証券会社を抱えている。その上、生命保険も扱うということは、言ってみれば、国民からの手数料を銀行へ集中させよう、という話だ。日本の銀行は、数字上預かり資産に対する収益力で外銀大手に劣るので、国として銀行をバックアップしていこうということなのだろう。銀行は、平時から特別扱いなのだ。
90年代後半の金融危機では、生保が倒産した際に保険の契約者負担が発生した。しかし一方で、銀行が倒産しても、預金者負担というものは一切無かった。銀行は金融システムであり重要度が高く、保険会社は一段価値が落ちるものだという当局の差別が過去の金融行政には垣間見えたが、ここに来て銀行強化がさらに進んでいる。
ただ、銀行強化が顧客の利益につながるかどうかには、疑問がある。なぜかというと、銀行は顧客の財産の「本体」を預かっているからだ。日本人の多くは、銀行に預金することが当たり前で、それが資産の中核になっている。たとえば証券会社に口座を持って取引していても、証券会社側からは、その顧客が一体幾らお金を持っているかの全貌は見えない。証券セールスを断わる台詞で一番多いのは、「悪いけど、今、お金がないから」という言い方である。銀行の場合には、それがない。これは、セールス上、非常に大きなアドバンテージだ。
銀行の投信販売が伸びている要因としても、顧客の財産の全貌が見えていることは大きい。給与振込のデータや住宅ローンなどのお金の流れを通じて、顧客がどういう生活をしているかがよく分かるのも銀行の強みだ。