入札不調はこれまで小規模な工事や改修工事などに多いとされてきたが、最近では大型の建築工事などでも入札不調が珍しい話ではなくなっている。また建設投資が盛んに行われているはずの東京都内でも、入札不調が報告されるケースは少なくない。

 実際、豊島区は9日、副都心線の千川駅近くで進められていた西部地域複合施設の建設計画について、建設費の高騰などが理由で3度目の入札が困難と判断し、2020年の前後まで計画を凍結させる方針を決定している。

 人件費や建設資材の高騰で2回目の入札で区が想定した総事業費58億円が、3度目の入札前に行われた再積算で約64億円に跳ね上がることが判明。区は五輪会場の整備などが完了する2020年頃までは建設費高騰が落ち着く可能性は低いと判断。最終的に長期間の計画凍結を選択している。

震災需要に五輪が乗って
人手不足はますます加速

 リクルートワークス研究所が今月発表したレポートによると、1997年から2010年にかけて、建設投資額は75兆円から42兆円にまで減少。それに伴って、業界の就業者数も685万人から498万人に減少している。

 この流れのなかで、技能労働者の年間給与も大幅にカットされた。1997年に平均で約438万円あった年間給与額は、2009年には約357万円にまで落ち込んでいる。このような状態に見切りをつけた技能労働者の業界離れが発生。建設市場が活気づいた現在になって、技能労働者の数が足りないという皮肉な結果を生み出している。

 建設業界が抱える慢性的な人手不足の問題について、リクルートワークス研究所の中村天江主任研究員が語る。

「そもそも建設人材の不足がオリンピックによって誘発されているというよりは、基本的に震災によって人手不足が発生したところに、五輪が乗ってしまったという図式になるだろう。人手不足に関していえば、震災の復興事業や防災対策の方がより大きなテーマとなっている。政策としての優先順位もあれば、労働者にとっても仕事の良し悪しという話があり、結果的に起きていることは2020年の五輪に向けて期間限定で労務単価を上げて、人手を東京五輪関連に引っ張ってこようと建設業界各社が動いているのが実情だ」

 建設人材の不足を考える際に重要なポイントとなるのが、若者の建設業離れがはっきりとした形で存在する点である。

「きつくて危険な仕事」とされる建設業において、これまでは他業種よりも高い賃金が魅力となり、若年労働者を繋ぎとめる役割を果たしていたが、現在その構図は事実上崩れ去っており、「末端の作業員の場合、酷いケースだとコンビニ店員の時給と変わらない場合もある」(関西に拠点を置く建設業者)という声も上がっているほどだ。