日産のクリーンディーゼルエンジン搭載車「エクストレイル」が、予想外の売れ行きだ。
10月6日の発表によると、9月18日の発売後、20日足らずで1077台(10月5日時点)に達した。月間販売目標100台の10倍強と、好調な滑り出しとなっている。M/Tのみの設定のため、前評判では“マニア向け”で売上げは期待できないと見られていただけに、日産にすれば嬉しい誤算といえる。
購入者の多くが北海道、東北、関東で、同型ガソリン車に比べ年齢層は高い。来年10月に導入される新排気ガス規制に初めて対応したディーゼル車なので、同型ガソリン車との価格差は約46万円と安くはない。しかし以前ディーゼル車を好んで乗っていた人達が、長らく市場になかった新型ディーゼルに食いついたようだ。
10月11日に発売された三菱自動車のディーゼル搭載「パジェロ」も販売は好調だ。半年で700台の販売予定が、早くも348台(10月6日時点)に達した。こちらはA/T設定で、同型ガソリン車との価格差が約36万円と、日産のクリーンディーゼル車に比べいくらかお得感がある。
とはいっても発売当初の売れ行きだけでディーゼル車を評価するのは少々早合点に過ぎる。
このパジェロディーゼルは前述の新排気ガス規制には対応しておらず、2010年8月までしか販売できない。言うなれば“期間限定販売車”だ。
先陣切ってクリーンディーゼルを出した日産も、この販売状況が続くかどうかには冷静な見方だ。「ディーゼル車を実際に市場に投入してみないと、需要が読めなかったので、もとの販売目標を控えめな数字にした」(日産自動車)。納車期間は2ヵ月と通常程度で、A/T設定や他車種搭載は、国内で充分ディーゼル車が認知されてから、という。
ディーゼル車を含むエコカー開発には、各社熾烈を極めている。奇しくも10月2日、ホンダがハイブリッド専用車「インサイト」を発表した。来春、満を持して発売となるが、同時期にはトヨタ自動車の新型プリウスも発売される予定だ。現状、国内ではエコカーといえばハイブリッド車が主流で、ディーゼル乗用車は新車販売市場の1%も満たない。
今のところ、もの珍しさから一部の愛好家が支持しているという状況から抜け出せていないのは、ディーゼル車のメリットである走りの性能を体感するには日本では一部の地域に限定されるし、軽油の値段がガソリンとあまり変わらないくらい上がって、その燃費経済性は薄れてきているからだ。
ユーザーにとって、エコカーの選択の幅が広がったことは間違いないが、今後ディーゼル車がハイブリッド車並みに国内で定着するかとなると、大いに疑問符がつくというのが実態といえそうだ。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 柳澤里佳)