農業する“場所”の選択と
粘り強さが成功のコツ

 宮下さんが今後の課題として挙げるのは、オーガニックの技術を身につけ、収穫を安定させることだ。

「本当はちゃんと師匠について学びたいんですが、なってくれる人がいません。おおまかなことは教えてくれても、肝心なことは誰も教えてくれない。ですから、今は独学です。幸い、就農者の方や飼料メーカーの人など電話やメールで相談できる人が何人もいるので救われています。恵まれた環境下でやらせてもらっている今のうちに、いろいろなことを試したいですね」

 人脈の広さが宮下さんの大きな財産といえるだろう。前職の経験から都内のレストランにも知り合いが多く、店からの要望でハーブの栽培も始めた。こうした販路を持つというのも強みだ。

 農林水産省の農業労働力に関する統計によると、日本の基幹的農業従事者(農業就業人口のうち、ふだんの主な状態が「仕事が主」の者)の平均年齢は年々上がり、2013年は66.5歳になっている。

 つまり、会社でいうと定年を超えた人たちが現在の日本の農業を支えているわけだ。農家の高齢化は日本にとって深刻な問題だが、「あと10年もしないうちに、昔からの農法を続ける農家は大幅に減り、有機栽培に取り組む若い世代の農家と拮抗した状態になるだろう。さらに、時代は安全で健康によく、おいしい野菜を求めている。オーガニックが農業の中心になっていくはず」という農業関係者の見方もある。そうなれば、宮下さんにとっても未来は明るいといえるだろう。

 脱サラして農業を始めるのは簡単なことではない。だが、宮下さんのように、覚悟をして踏ん張れば、その苦労を上回る喜びや充実感が得られる。自分と同じような道を目指す人たちにこんなアドバイスをくれた。

「重要なことは、就農の研修先や農業を営む場所を慎重に選ぶこと。これを間違えると、失敗する可能性が高くなると思います。地域によって決まりごとや人付き合いの大変さが違うからです。より多くの情報を集めて、自分が思い描く農業スタイルが実現できる環境を探してください」

 せっかく就農研修を受けても途中でやめてしまう人も少なくない。宮下さんのように、めげずにがんばりぬく粘り強さがあるかどうかも、成否を分けるポイントとなりそうだ。