つまり、米国によるイラク戦争の動機は、「石油利権だった」。日本でこれをいえば、即「陰謀論者扱い」である。だから、筆者もわざわざグリーンスパンを出して説明している。もちろん「石油がすべて」とはいわない。しかし、重要な動機の一つだったことは、(グリーンスパンも認めているように)その通りなのだろう。実際、米国はイラクの石油利権に入り込んでいた、フランス、ロシア、中国企業を追い出した。

 しかし、ここでの本題は、イラクではない。ロシアである。「ユコス事件」を聞いたことがあるだろうか。ロシアの石油会社ユコスのホドルコフスキー社長が、脱税などの容疑で逮捕された事件である(昨年末、10年ぶりに釈放された)。日本では、「独裁者プーチン」が「善良な大富豪」を捕まえた、ひどい事件だと語られることが多い。しかし、これも「石油がらみ」だったのだ。

 ホドルコフスキーは、米「エクソン・モービル」「シェブロン・テキサコ」(現在のシェブロン)に、ユコス(当時ロシア最大手)を売却しようとしていた。「また、陰謀か!?」そんな声が聞こえてくる。だから、日本経済新聞の元モスクワ支局長・栢俊彦氏がなんと書いているか見てみよう。

 

<米メジャーが法的に拒否権を持つ形でユーコスに入ってくると、事実上、米国務省と国防総省がユーコスの後ろ盾につくことを意味する。ロシア最大級の石油会社が治外法権の領域に逃げ去ることに、政権の武力機関派は激しい衝撃を受けたに違いない。>(「株式会社ロシア」日本経済新聞出版41p)

 

 プーチンの命令によってホドルコフスキーは逮捕され、「ロシアの石油最大手を支配する」という米国の野望は挫折した。しかし、覇権国家・米国はおめおめとは引き下がらなかった。今度はロシアの勢力圏・旧ソ連諸国で相次いで革命を起こし、「親米反ロ傀儡政権」を樹立していったのだ。具体的には、03年グルジア革命、04年ウクライナ革命、05年キルギス革命。これも日本人には、にわかに信じがたいことだろう。しかし、革命で失脚した指導者たちが、日本のメディアに語っている。

 

 例えば、03年11月29日付朝日新聞。

<「混乱の背景に外国情報機関」シェワルナゼ前大統領と会見
 野党勢力の大規模デモで辞任に追い込まれたグルジアのシェワルナゼ前大統領は28日、首都トビリシ市内の私邸で朝日新聞記者らと会見した。大統領は混乱の背景に外国の情報機関がからんでいたとの見方を示し、グルジア情勢が不安定化を増すことに懸念を表明した。>

 もう一つ、キルギスのアカエフ元大統領の発言。

「政変では米国の機関が重要な役割を果たした。半年前から米国の主導で『チューリップ革命』が周到に準備されていた」>(時事通信05年4月7日)
「彼らは野党勢力を訓練・支援し、旧ユーゴスラビア、グルジア、ウクライナに続く革命を画策した」>(同上)

 米国がロシアの石油・ガス資源を狙い、ロシア影響圏で革命をこっそり先導する。まさに、最近起きたウクライナを巡る一連の流れとよく似ていることに驚くだろう。米ロの諍いの背景と本質は、この頃も今も、あまり変わりがないのだ。

 話を05年当時に戻そう。「このままでは、全旧ソ連諸国で革命が起こり、『ロシア包囲網』が形成されてしまう!」プーチンは悩んだ。そして「ある重大な決断」を下す。