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スマートフォンの理想と現実

新プログラミング言語発表とヘッドホン製造会社買収から読み解く「クラウド戦争」時代のアップルの戦略

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第62回】 2014年6月6日
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 もちろん実際には、就職してからほとんど手を動かしていないし、Swiftで私が何かを作るとはあまり思えない。ただ、わずかに心得がある人間としては、「これはできるかも」と思えたし、同様の声はすでにSNS上などでも散見される。そして、そうしたハードルの低さ(とそれが喧伝されること)が、アップルの狙いの一つでもあったのだろう。

 では、そうして裾野を広げることで、アップルは何を実現しようとしているのか。これも、私が四の五のあげつらうよりも、メディア・アーティストであり、ニコニコ学会β主宰であり、産業技術総合研究所の研究員でもある江渡浩一郎氏が、ご自身のfacebookに記したコメントの方が、はるかに分かりやすい。

「ここまで考えてみて思うのは、アップルは「『これからプログラミングを始める人』にフォーカスしている」ということです。これはある意味異例なことです。すでにここまで開発者の層が広がっていて、世界中から開発者が集まっているその場で、それなのに「『あなた』ではなく『次の世代』に期待している」と言っている。

 しかし、これこそが本当の目的なのだろうと思うのです。つまり、「新しいプログラミング言語覚えるのきついな」と思っているような古い開発者を、いかに効率よく切り捨てるかってことを考えている。逆に言えば、「これから誕生する新しい開発者はうちが取り込む」ってことなんだと思うんですよ。

 開発者のマーケットで考えれば、当たり前ですが古くからやっている人や会社の方が有利なはずです。開発能力やノウハウは古くからやってる人や会社の方が持っている。マイクロソフトのような普通の会社であれば、そのような開発者を大事にします。しかしその場合は、新しく参加する開発者にはメリットが少ないとも言える。マーケットがおさえられているところでは、新規参加する人にはメリットが少ない。

 これからマーケットのルールが書き変わるところには、新規参加しようという開発者が生まれます。新しいプログラミング言語にシフトしようとしてるのは、まさしくそこを意図してるんだと思います。開発環境やマーケットのルールそのものが新しく書き変わること。これはまさしく新しく始める人への福音に他ならない。そういう意味では、プログラミング始めようかなと思っていた人にとっては、まさしく今が始めるチャンスだと言えるでしょう。」

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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