大事なのは、その世代の主流なコミュニケーション・ツールに慣れすぎると、コミュニケーション手段を異にする世代とのコミュニケーションがうまくいかなくなるということをしっかり認識しておくことです。

 LINEが普及してからというもの、携帯電話のメールすらしなくなっている学生が非常に増えています。今の学生の世代(LINE世代)が慣れ親しんでいるのは常時接続です。チャットアプリがあれば、誰でもどこでもすぐ仲間とコミュニケーションが取れることです。つまり、タイムラグがないのです。

 だから、文章を推敲しない。ネタをだす順番、つまり「序破急」「起承転結」を考えず、頭におもいついた順番にダダ漏れにする。短文・単語を羅列化し、文章は書けても、長い文章は書けないというのがLINE世代の特徴です。

 当然チャット上で交わされる中身といえば、「書き言葉」が限りなく「話し言葉」と化したものです。たとえば、飲み会の集合時刻が20時であるのに、勘違いして19時と書く。数秒後すぐに気づけば「あっ、いけねえ。20時だ、ごめん」という感じで連続投稿できます。

 スピーディーかつ、それもリアル空間での会話をほぼ再現できることがLINEの技術的な凄みともいえますし、私たちはその恩恵を受けているわけですが、コミュニケーションのタイムラグが無くなったことで、逆に「編集力」が落ちているのではないでしょうか。それこそ、手紙しか無い時代であれば、重要な項目をリストアップし、一枚の便せんに情報や思いをパッケージにし、もっとも伝わりやすいように言葉を選んで推敲する――よくよく吟味して筆を執っていたわけです。しかしLINEで常時つながっていることで、こうした訓練が物理的・環境的に難しくなってしまいました。

 LINE世代の学生が先日、あるプロジェクトの告知文を書いて、参加者を募ろうとしたのですが、告知文が書けませんでした。ぜひ来てほしい、集まってほしいと他人の行動を促すための説得力をもった「物語作成」の能力が身に着いていなかったからなのです。

 そもそも、人を誘う・人の行動を変えるには、単に、FacebookやLINEで告知しただけではだめで個別に電話する、場合によっては直接、頼みにいくといった、人を勧誘する基本すらよくわかっていません。大人たちがやっている営業努力というのは、彼らには、ほとんど理解されていないのではと思うことがあります。だから、入社後、営業実習、飛び込み営業などさせると突然辞めてしまう理由がよくわかります。

 情報をパッケージ化して、取捨選択することは当然今でも必要です。社会人になれば上司に提出する報告書もあれば、クライアントに出す提案書もあります。そこに書かれる「書き言葉」は「話し言葉」とは違います。しっかり情報や思いを推敲する力が身に着けば、「話し言葉」も要領を得たものになります。余裕がでてくれば、心がこもり、味のある「語り言葉」にも発展し、やがてストーリーテリング能力として形成されていきます。

20のセンテンスを考え、100回推敲しろ

 そういうわけで、「すずかんゼミ」では、ある取り組みを始めました。

 13年前のゼミでは、自己紹介や発表で今一つまとまっていなくても「決め台詞やキャッチコピーは何か?」と私が指摘すれば、なんとかなっていたものですが、講義時間中のワンポイントレッスンだけで手に負えず、もっと根本的なところにメスを入れようと考えたからです。