マーケットが荒れている。週初の17日、ついに日経平均が寄り付きから1万2000円割れとなった。米ドルも100円を切り、いよいよ90円台だ。経験的に、為替レートは「大台」を超えると、大きく変動する。ストップロスのオーダーに引っ掛かってレート変動が加速することもあるし、100円割れのレートでは「まさか100円割れはないだろう」という顧客心理を利用したデリバティブ商品のノックイン価格が地雷のように埋まっている可能性がある。もちろん、心理的な壁が取り除かれた、ということもある。

 今回の心理的な壁は、1ドル100円を切ったところで日本政府が為替介入をするかどうか、100円は「防衛ライン」であるかいなか、ということだっただろう。しかし、対米ドル以外の通貨との関係も考えた円の全体的な水準から言うと、現在はまだ相当な円安ゾーンだ。

 そして、日本経済だけが特に不調ということではない。現在、円安への誘導は正当化されにくい。今のところ介入は無いようだし、政府が今何とかしようとしても、日本だけの単独介入では効果は望めまい。仮に、円高を本格的に止める必要が出てくれば、国際的な協調介入によるしかないだろうが、その条件は整っていない。つまり、さらに円高になる可能性を覚悟する必要があるということだろう。

 気付いてみると、金は1000ドル、原油は100ドルを突破し、円は100円割れとなり、主だった指標が切りのいい数字を突破した。要は米ドル不安であり、本質はアメリカ売りだ。米証券大手ベアー・スターンズの資金難(事実上の取り付けだ)を、FRBがJPモルガン・チェースを経由して救済し、米欧5中銀が新たな協調策として資金供給を決定した。しかし、これらは単に流動性の供給に過ぎない。金融機関がバランスシートを回復させない限り、信用収縮が止まるわけではない、ということが見透かされてきたようだ。

 また、これまで、米ドルの価値を支えてきた要因に、米ドルの「使い勝手」というものがある。アメリカの金融機関は頑健で、金融法制も国際的な資金取引上使いやすく、なんだかんだ言っても米ドルが一番使いやすいし、アメリカこそが安心なお金の置き場所だという感覚だ。その使い勝手の長所が、米金融市場の混乱で、このところ怪しくなっている。ポールソン米財務長官は判で押したように「強いドルを望む」と言うが、米ドルの価値の下落は、目下趨勢的な流れであって、米政府としても、せめて下落のスピードを遅らせられれば、という思いだろう。