はあちゅうの誘われる技術その2
常日頃からグルメキャラを出す
――続いての誘われる技術は?
はあ 「常日頃からグルメキャラを出す」です。
さっきの続きで、行きたいところとか、食べたいところとか、人目につくところに書くんですけど、常日頃から「何とかキャラ」になっておくと、すごい誘われやすいなと思っていて、たとえば登山キャラの人だったら、「山登りに行かない?」とか、アクティブキャラみたいな、土日はいつも出かけているイメージがある人というのは、すごく声をかけられやすくなるので。
私の場合は、いつもご飯を食べているイメージがあるので、グルメキャラを出しておくと、「なかなか取れないお店が取れたよ」とか、「ここがおいしいんだよ」ということで声をかけられやすくなるので、誘われる技術の一つとして、「何々キャラ」みたいなのを出すのがいいんじゃないかなと思ったんです。
ベリ いいですね。ぼくもたぶんこのグルメキャラに入っちゃうと思うんです。料理の仕事だから。
はあ でも、あんまり出し過ぎると、おいしいものを食べ慣れていると思わると、誘いづらくなるらしくて、昔先輩にも、「もうはあちゅうはいろんなお店に行っていると思うから、誘う店に困っちゃったよ」みたいなことをいわれたんです。どうしたらいいですかね?
ベリ でも、ぼくも同じ悩みがあるんです。料理が仕事ですので、たとえば一人暮らしの女性の家に行きたい。で、「私はワインを持っていきますから、お料理はお任せします」というと、向こうは困るんですね。プロの料理人に何を作ればいいのかと。でも、ぼくはやっぱりハートですから、「料理は何だっていいんだよ」という。
ぼくが料理研究家を始めたきっかけは、家に女性たちを呼んでいたんですね、留学生の時に。いろんな女性を呼んでいた。ぼくは日本に来る前に軍隊にちょっと入っていたので、頭の中にもう女性しか入ってないんです。あと、日本語の勉強もしたい。あと、もう鶯谷に行くお金もない。もう家に誘うしかない。ただし、「来て」といっても誰も来てくれないので、何か誘い文句が必要ね。その時に「パスタを作るから遊びに来てください」といった。
はあ これもイタリア人の乱用ですね(笑)。
ベリ 日本人だったら肉じゃがでも何でもいいんです。「何か作るから来て」といった。それで、1人、2人、3人呼んで、そうしたらみんなおいしいといってくれるんです。本当においしいかどうかは分からないんです。向こうもたぶんぼくに興味があったから、優しいからおいしいといってくれたかもしれない。ところが、2、3ヵ月経ってから、私は毎回作るから、料理好きと思われて、みんな料理の雑誌や本を持ってきてくれるんです。
はあ ああ、料理キャラになりましたね。
ベリ そう。だから、ぼくは最初は遊びたいだけで、料理はいい訳で、ただパスタをちょびっと作っていたのに、向こうが勝手に雑誌とか本とかを持ってきて、訳の分からない、漢字もあんまり読めないし、どうするの?と。でも、それを見て、初めて料理研究家の存在を知ったので、そこからスタートしたんです。13年前ぐらい。
はあ その時はおいくつですか?
ベリ 今は35だから、22歳ぐらい。
はあ へえ、女性が導いてくれたんですね。
ベリ そう。だから、ただ遊ぶために誘っていたんですけど、その遊びから仕事が生まれてきたんですね。だから、まず誘うことが大事だと思うんです。誘って、すぐいいことがなくても、後からついてくるかもしれない。そういうことを学びました。
はあ 料理研究家になった経緯も聞けてよかったです。