こうしてできあがったのが現在の「おくすり手帳」だ。

 同じ医療者という立場でも、医師と薬剤師、訪問看護師、リハビリを行うコ・メディカルなどが顔を合わせる機会はめったにない。だが、手帳を介して、ひとりの患者の薬剤情報を共有し、健康被害から患者を守れるツールにしたい。「おくすり手帳」は、そんな薬剤師たちの知恵が詰まっている。

 ちなみに、正式名称は、漢字の「薬」ではなく、平仮名の「くすり」が使われる。「薬」という漢字を学ぶのは小学校3年生だ。低学年の子どもでも、手帳の意味が分かるように、あえて「おくすり手帳」という平仮名を採用したというところにも、手帳に込めた思いが感じられる。

有用性が期待されて
2000年から国の制度へ

 朝霞発の「おくすり手帳」は、飲み合わせによる健康被害の防止、重複投与を避けて医療費を削減するなどの効果が期待され、99年には厚生省と日本薬剤師会の共同で、全国7市でモデル事業が展開される。

 そして、2000年の診療報酬改定時に正式に国の制度に採用され、「おくすり手帳」に情報提供をした薬局は調剤報酬を加算できるようになった。

 こうして見てくると、「おくすり手帳」はあくまでも患者の健康被害を防ぎたいという薬剤師の思いから始まったもので、点数(医療費)はあとからついてきたということがわかる。

「おくすり手帳」は、複数の医療機関から処方された薬の飲み合わせを薬剤師が専門家の目でチェックするのが目的なので、情報は1冊にまとめることが重要だ。また、前述したように持病やアレルギーの有無、個人的に飲んでいるサプリメントや市販薬なども記入しておけば、適切な指導を受けることもできる。

 とくに飲み合わせに注意が必要な抗凝固剤などを服用している患者の手帳の表紙には、それと一目でわかる「注意事項シール」を貼って、健康被害を防ぐために二重三重の注意を払っている地域の薬剤師会もある。